領域最適化のアルゴリズムについて考える:フリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(12)(6/6 ページ)
原理原則を押さえていれば、高額なソフトウェアを用意せずとも「パラメトリック最適化」「トポロジー最適化」「領域最適化」といった“形状最適化”手法を試すことができる! 本連載ではフリーのFEM(有限要素法)ソフトウェア「LISA」と「Excel」のマクロプログラムを用いた形状最適化にチャレンジする。連載第12回では、前回に引き続き「領域最適化」をテーマに具体的なアルゴリズムについて考えながら、その理解を深めていく。
節点解と要素解
有限要素法ソフト(本連載ではLISAを使用)が表示する応力コンター図には「節点解」と「要素解」の2通りがあります。デフォルトで表示されるのは節点解なので、読者の皆さんは節点解を見ていると思います。一方、図10に示したものは要素解です。
有限要素法の手順では要素解を計算し、その後、表示段階で節点解が計算されます。図10の要素解では、図11に示すように応力分布が連続していません。両者の違いを説明しておきます。
図12は、図11における応力の不連続部の4つの要素を取り出したものです。青色の○で囲んだ箇所には4つの要素の節点が集中しています。有限要素法では要素ごとに応力が計算されます。ということは、青色の○で囲んだ部分の4つの要素の4つの節点は、異なる応力値を持つことになります。図11はそのことを表しています。
有限要素法モデルは、要素(1)(2)(3)(4)を結合させるために青色の○で囲んだ節点を1つの節点として、この1つの節点を4つの要素が共有しています。これは「節点共有」という結合方法です。1つの節点が4つの応力値を持つことになりますが、4つの応力値を平均してその節点の応力値としたものが節点解です。
要素解と節点解の応力分布を図13に示します。節点解の方がもっともらしい分布になり、要素間の応力の連続性も出てきました。でも、要素解が有限要素法の計算結果であって、節点解は平均値であることを意識しておく必要があります。どちらの解析精度が高いかは意見の分かれるところです。
領域最適化では高応力部の形状を変化させるので、高応力部がより鮮明に出力されている要素解を使うことにしました。
以上で領域最適化の理論的な部分の解説は終了となります。次回はLISAとExcelのマクロプラグラムを使って実際に領域最適化をやってみましょう! (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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