工場におけるCBMの実現に向け、アナログ・デバイセズとマクニカが共同提案:組み込み開発ニュース
アナログ・デバイセズは、「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」において、マクニカと共同で国内向けに展開しているCBM(状態基準保全)ソリューションを展示した。
アナログ・デバイセズ(ADI)は、「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」(2022年6月7〜10日、東京ビッグサイト)において、マクニカと共同で国内向けに展開しているCBM(状態基準保全)ソリューションを展示した。
展示したソリューションは、三相誘導かご型モーターに特化した予知保全サービス「Macnica Smart Motor Sensor」と、ADIのCBM開発プラットフォーム「CN0549」とマクニカが開発した機械学習が可能な評価ソフトウェアの組み合わせの2つである。
Macnica Smart Motor Sensorは、ADIが2018年に買収したオトセンス(OtoSense)開発の「ADI OtoSense Smart Motor Sensor」を、マクニカが国内向けに展開するOEMソリューションである。高精度の加速度センサーなどを内蔵するセンサーユニットを、検知対象となる三相誘導かご型モーターに装着するだけで、モーターのCBMを実現する予知保全が可能になる手軽さが最大の特徴だ。世界で利用されているモーターの7割は三相誘導かご型モーターといわれており、同市場に特化したCBMソリューションとなる。
センサーユニットは、内蔵の単三リチウムイオン電池4個で動作するので外部電源は不要である。センシングしたデータも無線LAN接続を介してクラウドに収集するので、ハードウェアのセットアップ作業はモーターにクランプで固定するだけで済む。クラウドとの接続についても、スマートフォンの専用アプリで簡単に設定でき「慣れれば5分程度で設置、導入が完了する」(ADIの説明員)という。
クラウドに収集したデータに基づくモーターの状態はWebブラウザ上のダッシュボードで確認できる。トップ画面では、検知可能な9つのモーター異常(ベアリング、固定子巻線、回転子、シャフトバランス、エアギャップ、アライメント、冷却システム、機械的な緩み、電源システム)の有無を表示しており、工場などの現場の技術者にとって異常を見つけやすい構成になっている。センサーユニットには、加速度センサーだけでなく、磁気センサー、温度センサー2つ(モーターと接する内側とその逆の外側)も組み込まれている。「加速度センサーで機械系、磁気センサーで電気系、温度センサーで冷却系の故障を検知する仕組みになっている」(同説明員)。
初年度1年間の導入費用としては、買い切りとなるセンサーユニット1台と、その1台分のクラウド利用料金の合計で、固定資産の計上をせずに済む10万円未満を想定している。なお、ソフトクリームの総合メーカーである日世が、ソフトクリーム製造の乳化作業を行うホモゲナイザーの不具合監視とメンテナンスで採用した事例が報告されている。
CBMを実現するアルゴリズム開発向けのソリューション
工場の現場での活用が見込まれるMacnica Smart Motor Sensorに対して、CN0549と機械学習が可能な評価ソフトウェアの組み合わせソリューションは、加速度センサーの振動データを基にCBMを実現するアルゴリズム開発向けになる。
加速度センサーとしては、モーターなどの機械装置に直接装着できるIMVの「VP-8021A」を用いている。「開発段階から現場で運用可能なセンサーを使うことで、開発時も現場運用時も同じ高い精度での予知保全が可能になる」(マクニカの説明員)という。
CN0549は、機械学習のプログラミングで広く利用されているPythonやMATLABなどとの連携が可能だ。マクニカの評価ソフトウェアは、振動データのエンベロープ解析やFFT解析結果の他、RMSなどの特徴量も表示できる。機械学習は、時間同期データでは一般的なMT(Mahalanobis Taguchi)法をベースに行える。機械学習モデルと計測データの差分も3Dマッピングで示すことで、予知保全につながる状態異常を見いだしやすい仕組みを用意している。
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