工場設備の故障予知に必要なセンサーとは、MEMSでゲームチェンジを起こす:スマートファクトリー
アナログ・デバイセズは、機器メンテナンスに最適なMEMS(微小電気機械システム)加速度センサーの新製品を発表した。「従来にない、圧倒的な低ノイズ、温度安定性、広帯域の特性によって、スマート工場向けセンサーで“ゲームチェンジ”を起こす」(同社)という。
アナログ・デバイセズは2017年5月10日、東京都内で会見を開き、機器メンテナンスに最適なMEMS(微小電気機械システム)加速度センサーの新製品を発表した。超低ノイズ/広帯域の1軸加速度センサーの「ADXL1001/1002」と、低ノイズ/低温度ドリフト/低消費電力を特徴とする1軸加速度センサーの「ADXL356/357」で、1000個受注時の参考単価は、ADXL1001/1002が29.61米ドル、ADXL356が28.60米ドル、ADXL357が31.78米ドルとなっている。
同社リージョナル・マーケティング&チャンネル・グループ マーケティングマネージャーの高松創氏は「当社が1987年にMEMSセンサーを開発してから30年になるが、今回の新製品はその集大成といえるものだ。従来にない、圧倒的な低ノイズ、温度安定性、広帯域の特性によって、スマート工場向けセンサーで“ゲームチェンジ”を起こすことになるだろう」と意気込む。
高松氏の言う“ゲームチェンジ”には、機器メンテナンスがTBM(時間基準保全)からCBM(状態基準保全)に移行しつつあることが背景にある。定期的な点検と部品交換でメンテナンスを行うTBMに対して、CBMは機器の状態を継続的に監視/計測するので、その状態に応じた最適なタイミングでの点検と部品交換が可能になり、計測結果を分析すれば故障予知にもつなげられるからだ。
ただし、故障予知が可能なレベルのCBMを行うには、一定レベル以上の性能を持ったセンサーが必要になる。工作機械や鉄道、インフラなどミッションクリティカルな設備の状態監視は振動周波数を用いることが多い。そして故障予知までを見据えた場合には、低ノイズ、高感度、広帯域といった性能指標が重要になってくるのだ。
従来のMEMS加速度センサーはこれらの性能指標をクリアできていなかった。今回発表した新製品は、故障の予兆となる、人間には関知できないkHzクラスの微小な振動を計測できるレベルの低ノイズ性能を確保した。また、kHzクラスの振動計測で重要になる高いg測定レンジも実現。工場の設備や鉄道、インフラといった厳しい環境での利用に対応できるように動作温度範囲も−40〜125℃とした。
現在、工場設備の状態を監視するためのセンサーとしては、ピエゾ素子/圧電素子を組み込んだ比較的高価なセンサーが用いられている。外形寸法は数cm角のボックスサイズで、価格も20万〜30万円に達するという。今回発表したMEMSセンサーは、これらピエゾ素子/圧電素子を用いるセンサーと同レベルの性能を確保しつつ、外形寸法で5mm角程度のパッケージに収まっている。マイコンなどと組み合わせてセンサーモジュールに仕立てた場合でも大幅な小型化が期待できそうだ。そして、センサーの単価も3000円程度なので、センサーモジュールの価格も数万円に抑えられるとみられる。「3軸加速度センサーのうちADXL357は20ビットの高分解能A-Dコンバーターも集積しており、I2CやSPIといった端子からセンサー信号のデジタル出力が可能。このため、センサーモジュールの開発や設備への組み込みは極めて容易だ」(高松氏)。
主な顧客としては、既存の測定機器メーカー、スマート工場向けに新たなセンサーノードを開発したいと考えているスタートアップやベンチャー、工作機械メーカーなどを想定している。また、測定機器やセンサーノード、工作機械のユーザーである工場からも、スマート化の評価検討に向けた引き合いがあるという。
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