パナソニックが有機イメージセンサーを工場とインフラへ、色再現性の高さも魅力:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングスは、「画像センシング展2022」において、開発中の有機イメージセンサーの工場や社会インフラにおける活用を意識した展示を行った。2016年2月に学会発表した有機CMOSセンサーは実用化に向けた技術開発が大きく進展しており、今回はさまざまな現場における有効性を示した形。
受光部が有機“薄膜”なので照射光の影響を受けにくい
また、有機イメージセンサーは、GS機能によって製造ラインを高速で流れる検査対象をひずみのない正確な状態で撮像できる。8Kの高解像により、液晶パネルの1ピクセルの中にあるRGBの各画素の状態を確認することも可能だ。
監視、インフラ向けのうち、ITS(高度道路交通システム)では現在4Kカメラが提案されているが、自動車のナンバープレート認識を想定すると最大でも2車線までしかカバーできない。一方、8Kの有機イメージセンサーであれば5車線までカバーでき、特に海外の大規模な自動車専用道路などにも対応できる。また、有機イメージセンサーの高いWDR特性が起点となって、鉄道の前方認識用などで使いたいという声も出ているという。
今回は、有機イメージセンサーのもう1つの特徴である色再現性についての展示も行われた。一般的なCMOSセンサーの受光部であるシリコンフォトダイオードは厚みが3μmあるため照射光の影響を受けて混色を起こしやすい。有機イメージセンサーの受光部の有機薄膜は厚みが0.5μmと薄いため、照射光の影響を受けにくく高い色再現性を実現できている。実際に、一般的な照明色であるホワイト光の他、シアン光、イエロー光、マゼンダ光を照射した場合の、CMOSセンサーと比べた色再現性を示してみせた。
映像機材向けでは8K解像度が前提となっていたが、工場の生産ラインや社会インフラ向けでは8K解像度にはこだわらない。4Kなど画素数を下げてカメラモジュールなどを小型化することで、有機イメージセンサーが持つGS機能やWDR、色再現性といった特性をより幅広く利用していく方向性での製品化も検討しているという。
関連記事
- パナソニックが有機CMOSセンサーを披露、高解像かつWDRでGS搭載の三方良し
パナソニックは、「第4回 4K・8K映像技術展」において、開発中の有機CMOSセンサーを展示するとともに、同センサーを用いて試作した8Kカメラで撮影した映像をリアルタイムで見せるデモンストレーションを披露した。 - 裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表
パナソニックは、半導体技術の国際学会「ISSCC2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。 - マシンビジョンへの応用期待、近赤外線域撮像が可能なCMOSセンサー技術を開発
パナソニックは、イメージセンサーの同一画素内で近赤外線域の感度を電気的に変更できる電子制御技術を発表した。赤外線カットフィルターなどが不要となり、イメージセンサーの小型モジュール開発などに応用できる。 - ソニーの裏面照射型CMOSセンサーが「3階建て」に、飽和信号量2倍でDR拡大
ソニーセミコンダクタソリューションズは「世界初」(同社)の2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー技術を開発した。光を電気信号に変換するフォトダイオードと信号を制御するための画素トランジスタの層を別々の基板に形成し積層することで、従来の裏面照射型CMOSイメージセンサーと比べて約2倍の飽和信号量を確保した。 - キヤノンの320万画素SPADセンサーが9年ぶりの快挙、独自画素構造に2つの工夫
キヤノンが、暗所でも高感度に撮像が可能なSPADセンサーで、フルHD(約207万画素)を超えて「世界最高」(同社)となる320万画素を達成したと発表。従来発表の100万画素SPADセンサーから3倍以上の高画素化を実現するとともに、カラーフィルターを用いたカラー撮影も可能であり、センサーサイズも13.2×9.9mmと小型に抑えた。 - CCDやCMOSを超える裏面照射型CMOSセンサって?
デジタルカメラやビデオカメラに搭載されている撮像素子「CCD」と「CMOS」の違いを基に、両者の課題を補う新技術を紹介します
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.