日独共に脱炭素の「切り札」は水素か、ハノーバーメッセ2022レポート【前編】:ハノーバーメッセ2022(3/3 ページ)
世界最大規模の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ) 2022」が、5月30日(現地時間)にドイツのハノーバー国際見本市会場で開幕しました。現地参加した筆者が前後編で会場レポートをお届けします。
ゼロエミッションの取り組み加速
日本は2030年までに再生可能エネルギー利用率を40%まで引き上げるという目標を掲げています。このために、海に浮かばせる浮体式の風力発電について実証実験を進める他、アンモニア火力発電の導入を検討するなど、ゼロエミッション発電に向けた取り組みを加速させています。
なお、一般的に、CO2はモノが工場などで製造されている時だけではなく、原材料を集めたり精製したりする時や、消費者によってモノが使用されている時、モノが廃棄される時にも排出されます。ライフサイクルCO2と呼ばれるこの観点から見ると、脱炭素実現に向けたエネルギー源として風力発電は優れており、特に米国などではさらなる普及に期待が集まっています。
“ガス・ニュートラル”も意識
ただ、日独が脱炭素の切り札として本命に挙げているのは水素エネルギーです。水素は、利用段階でCO2を発生させず、熱エネルギーを通して運動エネルギーに変換したり、電気を取り出したりすることができます。航空機、船舶、大型トラックなどではまだ利用が難しいようですが、産業界では広く利用が期待されています。
日独経済フォーラムでは「欧州では再生可能エネルギーで作った電気で水素を生成する方針だが、日本では再生可能エネルギーの活用に限界がある。水素を海外から調達し、天然ガスや石炭火力を置き換えて電気を作るというプランで検討している」という意見が聞かれました。ただ、一方で「問題になるのはコストで、5分の1の価格にならなければ天然ガスを置き換えることは難しい」という懸念もあるようです。
また、日本とドイツは、ロシア産の天然ガスへの依存度が高い国です。ロシア産資源の調達に人道的見地から問題が発生している現在、エネルギー資源の転換は大きな課題になっています。日独経済フォーラムでは、“ガス・ニュートラル”という言葉が出てくるほどで、代替資源は大きなテーマになっていました。
- 国内の脱炭素化としては、水素は有力なエネルギー源でありつつも天然ガスの代替としてはコスト面が現在の課題
- 欧州はじめ海外マーケットでは、水素ビジネスは国内製造業の重点投資分野になる
こうした点が、今回、再確認されていたように思います。
ハノーバーメッセ2022レポートの前編は以上です。後編では、個別企業の講演や展示について紹介します。
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