国産巨大3Dプリンタとリサイクルシステムを一体化、「鎌倉発」の最先端ラボ公開:サステナブル設計(4/4 ページ)
慶應義塾大学SFC研究所 環デザイン&デジタルマニュファクチャリング共創ラボは、科学技術振興機構の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」において、地域共創分野育成型プロジェクトとして採択された「デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点」の地域研究活動サテライト拠点として開設する「リサイクリエーション 慶應鎌倉ラボ」の内覧会を開催した。
市民から資源を回収するとともにアイデアを募る
鎌倉市内で行われている市民参加型の活動としては、花王が数年前からカヤックやカマコンなどと連携し、プラスチック回収活動「RecyCreation(リサイクリエーション)」を展開。小学校に回収ボックスを設置し、回収された洗剤などの使用済み詰め替えパックを裁断、洗浄して、樹脂として再生/リペレット化して、組み立て/再利用が容易なブロック「おかえりブロック」を作り、学校や図書館などに寄贈する活動を行ってきた。
今回開設したリサイクリエーションラボでは、これらの活動を継承しつつ、コロナ禍で回収率が低下してきたところを、あらためて活性化させて、回収からアップサイクルまでをつなぎ、市民、自治体、企業の全てが創造的に参加できる新たな仕組みづくりを目指していく。
2022年度の主な活動としては、(1)「しげんポスト」の設置と製作、(2)「まちのアイテム」のアイデア募集の2つを掲げる。
しげんポストとは、市民から使用済みプラスチックなどの資源を回収するためのボックスで、協力者に対して地域デジタル通貨「まちのコイン」を付与する。以前のRecyCreationの活動では小学校が主な設置場所であったが、今回は、より多くの市民への参加を促すべく、鎌倉市役所、リサイクリエーションラボ、カヤックのオフィスの3カ所にしげんポストを設置する計画だという。設置開始時期は2022年6〜7月を予定し、当面は洗剤などの使用済み詰め替えパックを対象に回収を行う。なお、しげんポストは3Dプリンタで製作されているため、回収する資源の対象に合わせて、ポストの入り口部分の形状を自由に変更することが可能だ。これにより、「今後、数年かけて回収品目を増やしていく」(田中氏)という将来的な拡張にも柔軟に対応できる。
また、しげんポストによる資源回収を進めながら、「まちのアイテム」のアイデアを募る。例えば、公園のベンチや遊具といった大型のものから、待合所などの椅子、プランターといったものまで、地域に役立つ、皆で長く使えるもの(公共物、準公共物)を作ることを目指す。そのアイデアを募るための窓口として、まずは2カ月に1度のペースで体験会などを継続的に開催し、参加者からの声を集める考えだ。なお、家に余っている樹脂製ハンガーからプランター/一輪挿しを作る、第1回のリサイクリエーション体験会が2022年6月5日に実施されている。
「これら活動で集まったまちのアイテムのアイデアを実現するために必要な量のリサイクル材料を、しげんポストで回収した使用済みプラスチックなどの資源から賄い、リサイクリエーションラボで造形して、市民が利用する公共施設などに還元していく」(田中氏)
内覧会翌日にはオープニングセレモニーも
内覧会翌日の2022年6月4日には、慶應義塾長の伊藤公平氏、鎌倉市長の松尾崇氏、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課長の井上睦子氏、共創の場形成支援プログラム 地域共創分野プログラムオフィサーの中川雅人氏、ラボ代表を務める田中氏らによる、オープニングセレモニーも開催された。
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