鎌倉に「国内初」のプラスチック高付加価値アップサイクル研究拠点を開設:サステナブル設計
科学技術振興機構の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」において、地域共創分野育成型プロジェクトとして採択された「デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点」は、慶應義塾大学と鎌倉市、参加企業/団体21社の共創と、市民参加型実験を加速すべく、研究拠点施設「リサイクリエーションラボ」を開設した。
科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」において、地域共創分野育成型プロジェクトとして採択された「デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点」は2022年5月30日、慶應義塾大学と鎌倉市、参加企業/団体21社の共創と、市民参加型実験を加速すべく、JR鎌倉駅から徒歩5分の場所に、研究拠点施設「リサイクリエーションラボ」を開設したことを発表した(ラボ内部の様子を紹介した記事はこちら)。
COI-NEXT 地域共創分野は、未来の在りたい地域の社会像を策定し、その達成に向けて、バックキャスティングによる研究開発を推進すると同時に、大学/企業/自治体などによる産学官共創拠点を形成し、地域の社会課題解決や地域経済の発展を目指すプログラムである。デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点は、慶應義塾大学が代表機関を務め、幹事自治体の鎌倉市、参画企業21社(幹事企業:カヤック)とともに応募し、地域共創分野育成型プロジェクトとして採択され、2021年度より実施されている。なお、デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点プロジェクトのリーダーは、慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏が務めている。
田中氏らは、COI-NEXTの前身である「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」(実施期間:2013〜2021年)において、活動の集大成の1つとして、プラスチックリサイクルと大型3Dプリンタを接続するシステムを完成させ、東京オリンピック・パラリンピックの表彰台の製造(98台の表彰台を完成させるために、約20日間で7000枚のパネルを量産)で運用した実績を有する。
今回、このシステムを鎌倉市における市民参加型資源循環の取り組みに活用すべく、JR鎌倉駅の近くにリサイクリエーションラボを開設し、「国内初」(プレスリリース)のプラスチック高付加価値アップサイクルのための都市型施設として運用を開始する。
具体的には、鎌倉市がこれまで地域や企業などと連携しながら、取り組んできた市民参加型のプラスチック回収活動「RecyCreation(リサイクリエーション)」の流れを統合し、回収からアップサイクルまでをつなぎ、市民/自治体/企業の全てが創造的に参加できる新しい仕組みづくりを探索する。
その活動のきっかけとなる取り組みとして、市民らの行動変容を誘発する新たな回収装置「しげんポスト」を3Dプリンタで製造し、リサイクリエーションラボの前や市役所などに実験的に設置する予定だ。
また、デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点プロジェクトでは、最終的に、観光客も参加できる循環創造社会の可能性を探るべく、駅を舞台とした「SHONAN FAB STATION PROJECT」も併せて発足。湘南モノレール 湘南江の島駅を会場とし、2022年6月1日から、プラスチックリサイクルをテーマとした展示を実施。展示台にはRecyCreationの活動で回収された資源から作られた「おかえりブロック」が使用される。
さらに、同年6月4日には、誰でも無料で参加できるキックオフシンポジウム「リスペクトあふれる循環創造社会を目指して」を開催し、現在進行中のプロジェクトと、目指している未来像を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【前編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。 - 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【後編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。 - 産学官民の共創で「プラスチック地捨地消」を実現、鎌倉を新たな循環型都市へ
慶應義塾大学は産学官の共創により提案した「デジタル駆動 超資源循環参加型社会 共創拠点」が、科学技術振興機構による「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の地域共創分野の育成型プロジェクトとして採択されたことを発表した。 - ワクチン接種の「打ち手不足」解消に貢献、3Dプリンタ製筋肉注射練習モデル公開
慶應義塾大学SFC研究所は、同大学 看護医療学部 准教授の宮川祥子氏が推進するプロジェクトが、3Dプリンタ製筋肉注射練習モデルの設計データおよび作成/使用方法に関する説明書を特設Webサイトに公開したことを発表した。ワクチン接種の打ち手不足解消に向け潜在看護師の実技練習環境の整備を支援する。 - 東京の水辺空間に“新しい庭”を、3D技術を駆使した「みらい作庭記」
JR東日本は複合施設「ウォーターズ竹芝」の芝生広場において、水辺空間に“新しい庭”を創造する取り組みを開始した。慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 田中浩也研究室と連携したプロジェクトで、最新のデザインスキームと3Dプリンティング技術を活用した新たな庭づくりを進める。 - 3×3×3mの超大型造形が可能な3Dプリンタでリサイクルプラ製ベンチを製作
エス.ラボは、最大造形サイズが3000×3000×3000mmの超大型ペレット式3Dプリンタ「茶室」(開発名)を開発。同時に、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ、積彩と共同で、茶室と材料にリサイクルプラスチックを用いた大型プラスチック製ベンチの造形にも成功した。