PLMでコンプライアンス対応(2):自動車業界のトレーサビリティ強化策:DX時代のPLM/BOM導入(6)(2/2 ページ)
本連載では製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM/BOMを中心に、DXと従来型IT導入における違いや、DX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察していく。第6回は自動車業界の法改正や欧米の品質規格と、PLMによる対応、特に変更管理とプロジェクト管理のポイントを解説する。
PLMによる設計変更モデル例
PLMにおける変更管理のポイントについて確認しましょう。まずは設計変更管理です。図表3は、PLMにおける設計変更管理モデルの例を示します。設計変更管理プロセスは、自動車業界に限らず、ほとんど業種のPLMシステムで実装されています。
図表内左は設計変更前、図表内右は変更後のE-BOM(設計部品表)をそれぞれ表します。Part2のリビジョンアップに伴いSubAssy1が、Part4からPart5への置き換えに伴いSubAssy2がそれぞれリビジョンアップされています。そして、変更されたアイテムに対してECO(この例ではECO1)が関連付けられます。
ECOとは「Engineering Change Order」の略で設計変更オーダーのことです。ECOは変更の背景や実施のポイントを変更対象品目ごとに関連付けて管理するので、トレーサビリティーを強化することができます。また、生産工場や生産指示のマスターであるM-BOM(製造部品表)に変更情報を正確かつ効率的に伝達することも可能にします。ECOは設計と工場の間を取り持つ重要な管理アイテムなのです。
PLMにおける製造変更管理モデル例
続いて、製造変更管理モデルについて確認しましょう。図表4は、PLMにおけるMCOを用いた製造変更管理モデルを示します。MCOとは、Manufacturing Change Orderの略で、製造変更オーダーとも呼ばれ、主に生産技術部門や購買部門が作成します。
図表4は、変更前と変更後のM-BOMとBOP(工程表)を示します。この例では2つの工程(Process1とProcess2)において設備変更があり、それぞれにMCO(ここではMCO1)が関連付けられています。ECOと同様、MCOの内容や関連付けられたアイテムから、いつどのような理由で製造条件や工程が変更されたのかを把握することができるのです。
今回は、メガリコールに端を発した法令改正とIATF16949の変更管理の要求に対する、PLM実装のポイントについて解説しました。次回はドイツ自動車工業会が制定したVDA規格に対応するための製品開発プロジェクト変更管理をご紹介する予定です。
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著者プロフィール
三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役
大阪大学基礎工学部卒業。
大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。
主な著書
・「図解DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門」,日本能率協会マネジメントセンター(2022)
・「5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術」,日本能率協会マネジメントセンター(2018)
・「製造業の業務改革推進者のためのグローバルPLM―グローバル製造業の課題と変革マネジメント」,日刊工業新聞社(2012)
・「BOM/BOP活用術」,日経xTECH(2016)
・「グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント」,ITメディア社MONOist(2010)など多数
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