モノのインターネットはPLMにどういう変化をもたらすのか:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
IoTがあらゆる製品に変化をもたらすといわれている中、設計・製造系のシステムが変化しなくていいのだろうか。「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」として独自のPLMを展開する米国Arasの創業者でCEOであるピーター・シュローラ(Peter Schroer)氏は「古いPLMは競争力を失う」と指摘する。同氏にIoTによる製造業の環境の変化とPLMの変化について聞いた。
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)により、製造業にも大きな変化がもたらされようとしている。自社内では、工場の自律運営などを実現する、ドイツの「インダストリー4.0」などの動きが活発化している他、生産して販売する製品そのものがIoTデバイスとなり、「製造業のサービス化」など新たなビジネスモデルが生まれつつある(関連記事:製造業は「価値」を提供するが、それが「モノ」である必要はない)。
これらの状況の中で「製造業を支援するPLM(Product Lifecycle Management、製品ライフサイクル管理)システムなどのITシステムが今まで通りでよいはずがない」と強調するのが、米国Arasの創業者でCEOであるピーター・シュローラ(Peter Schroer)氏だ。同社はクラウド型のPLMシステムを展開しているが、「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」という珍しいビジネスモデルを取っていることが特徴だ。同モデルでは、PLMソフトウェアそのものは無料だが、その代わりにソフトウェアに掛かるサポート費用やメンテナンス費用をサブスクリプション(定期契約)で提供するというビジネスモデルを取る。「IoT時代のPLM」に求められるものはどういうものになるのだろうか。同氏にIoTがもたらす変化とPLMの将来像について聞いた。
メカの情報だけを管理できれば製品力につながるのか
MONOist IoTが製造業にとって製品そのもの、またモノづくりの在り方を変えるといわれていますが、どういう変化があると考えますか。
シュローラ氏 われわれの直接の顧客企業ではないが、IoTのもたらす変化を考えるのには米国テスラの電気自動車(EV)を考えると分かりやすいだろう。テスラは電気自動車を販売しているが、通信を経由したソフトウェアのバージョンアップにより、機能強化を行っている。それはマイナーチェンジというものではなく、大きく機能向上をもたらすようなもので、顧客にとっては常に最先端の機能を利用できるというメリットが得られる。
最終製品がこのような形態になると考えた場合、設計・開発するITシステムも最適なものに進化していかなければならない。例えば、現在の設計システムで考えるとメカとエレクトロニクス(電気)、ソフトウェアが個別で設計・開発され、それぞれのデータがそれぞれで管理されているというような状態だ。従来のPLMでは3次元CADなどメカ設計データを管理することを主目的としたものが多いが、それだけで本当に製品の競争力を生み出すことができるのか、ということを問いたい。当然、それでは不十分だという回答になるだろう。
われわれが2015年4月に米国デトロイトで開催したユーザーイベントでは、テーマを「Rethink PLM(PLMを考え直す)」とした。最終製品が大きく変化しようとする中、モノづくりの基盤としてのITシステムも今までにない変化が必要になる。
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