サプライチェーン強靭化のため、まずは現地・現物主義からの脱却を:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症に続き、ロシアとウクライナを巡る地政学的リスクなど、サプライチェーンに多大な影響を与える事象が続く中、製造業はどのように供給網のレジリエンス向上に取り組むべきか。現状と展望について、Anaplanジャパン 社長執行役員の中田淳氏に話を聞いた。
サプライヤーのPSI情報を単一プラットフォーム上で管理
MONOist ロシアとウクライナを巡る問題もサプライチェーンに影響を与えています。
中田氏 レジリエンス向上を阻む要因の1つがグローバル化だ。グローバルにつなげようとしてサプライチェーンが伸び切っているため、大小さまざまな影響をどうしても受けやすくなる。なお、サプライヤーの切り替えの話をしたが、現実的にはコスト転嫁などの問題があるため、軽々に代替することもまた難しいと思う。ただ、(ウクライナ問題のような)緊急時の選択肢を見える化し、確保する上では役立つ。
MONOist 先ほどの「サプライヤーを巻き込んだサプライチェーン対策」というのは具体的にどういうことでしょうか。
中田氏 あるメーカーでは同社が持つサプライヤーの内、約200社を対象に、PSI(生産、販売、在庫)情報を集約化して、シングルプラットフォームにおいて複数社間で共有し、調整を容易にする取り組みを行っている。平時からリスクヘッジとして一定の在庫を保有することと併せて、緊急時のサプライチェーンへの影響度合いの把握と、その対策を迅速に実行できる仕組みを作っている。
突発的なアクシデントが発生すると、その対応には非常に膨大な工数がかかる。これをできる限り削減するとともに、部品の在庫不足を未然に防ぎ、製品や部品の枯渇日を迅速に算出する。また別のメーカーの話となるが、将来的に2次請けサプライヤーを含め、約1万社のサプライヤーとのコラボレーションを想定している企業もある。
このようなPSI情報の見える化、集約化を通じ、調達購買のシミュレーションを行いたいという相談も増えている。これまでにもPSI計画の最適化に取り組みたいといった相談はメーカーからもよく受けていたが、サプライチェーンのレジリエンスの重要性がメディアで盛んに報じられていることもあってか、危機感を持ってさらなる対策を打とうとしている様子が伺える。
もっとも、調達購買部門は現状ではExcelベースで業務を行っている企業が多く、これを集約して、データ活用しやすい形式に置き換える取り組みを進めるところから始めなければならない。データを活用して計画業務に役立てるまでの道のりは、ロングジャーニーになるだろう。
デジタル化、自動化で業務のつなぎ直しを
MONOist 今後、製造業はどのようにサプライチェーンのレジリエンス向上に取り組むべきでしょうか。
中田氏 繰り返しになるが、常日頃から情報を蓄積しておくことが、緊急時の対応を円滑化する対策につながる。担当業務の標準化によって、緊急時でも最低限の情報が集まる仕組みづくりも大事だ。
また、サプライチェーン関連の業務は、まだまだ人間が関与するプロセスが多いように感じる。直近でも「需要予測に基づいたアロケーション業務を2人の担当者がExcelによる“名人芸”でさばいているのだが、これを自動化できないか」という相談があった。
国内製造業の基本だった現地・現物主義を脱却し、日本の優秀な人材が成り立たせていたプロセスをデジタル化、自動化で改めてつなぎ直す必要がある。(社会全体で)将来的な人材難が予測される中で、人が介在しすぎないシステムが求められている。
もちろん、メーカーが展開する大量の製品全てに関してサプライチェーンの管理、予測を行うことは難しい。例えば、売り上げトップ十数%の製品をピックアップし、関連業務をAIで自動化して、人は意思決定に徹する。こうした将来に足を踏み出せないかと、当社も取り組みを続けている。
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