日立の2024中計は成長モードへシフト、Lumada事業で利益の3分の1を稼ぐ:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
日立製作所が2021年度決算と2022〜2024年度の中期経営計画「2024中期経営計画(2024中計)」を発表。2024中計の財務目標は、売上高が10兆円にとどまるものの、新たな利益指標として取り入れるAdjusted EBITA率で2021年度の8.3%から12%に伸ばすなど利益率を大幅に伸ばしていく計画である。
3年間で累計1兆6000億円の成長投資
2024中計では、CO2排出削減貢献量を中心としたグリーン価値の創出に向けた目標も掲げている。2024年度には、日立エナジーをはじめグリーンエナジー&モビリティが実現する年間約8900万トンを中心に、2024年度には年間約1億トンのCO2排出削減貢献量の実現を目指す。そのために必要なR&D投資として、グリーンエナジー&モビリティで2000億円、日立Astemoでは3000億円を想定している。
研究開発部門出身の小島氏が、2030年代の成長に向けて注力する方針を示しているのがイノベーションのための先行投資だ。2024中計の3年間で、自社で手掛ける先端研究投資に1000億円、外部のスタートアップなどに向けたCV(コーポレートベンチャー)投資枠に500億円を用意している。小島氏は「現在は、2050年に向けた大きな技術転換点にあり、この変化に乗り遅れず次世代の成長をしっかり担保するためにも先行投資が必要だ」と説明する。
キャピタルアロケーションでは、2024中計の3年間でコアFCF(フリーキャッシュフロー)1兆4000億円、資産売却9000億円で合計2兆3000億円のキャッシュ創出を行った上で、7000億円を株主還元に充てつつ、残りの1兆6000億円を成長投資に向ける。グリーン価値の創出やイノベーションのための先行投資などは、この成長投資の中から賄われる。
また、企業のカーボンニュートラル目標としては、2030年度にGHGプロトコルに基づくスコープ1と2、2050年度にスコープ3での達成を目指す。そのために2024中計では、スコープ1と2について2024年度末に2010年度比で半減を目標とし、3年間累計で省エネ/再エネ設備に370億円の投資を行う。
グローバルでの成長に必要なデジタル経営基盤による効率化では、日立エナジーとグローバルロジックによる先進的な取り組みをベースに刷新を進める。「製品系では日立エナジー、ITではグローバルロジックが進んでおり、これらの取り組みを日立グループ内に展開、活用するのが近道だ」(小島氏)。2024中計の3年間累計で800億円を投資し、2024年度には1200億円以上のコスト削減効果を得たい考え。
人財の獲得や育成、従業員エンゲージメントの強化、DE&I(ダイバーシティー、エクイティ&インクルージョン)の強化も進める。特に、デジタル人財については、現在の6万7000人から、海外を中心に9万8000人まで増やす方針である。
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