車載機器のメーカー問わず車両動態情報を収集、可視化するプラットフォーム:物流のスマート化
traevoは2022年4月13日、車載機器のメーカーを問わず、車両の位置情報などを一元的に管理し、運送事業者や荷主、着荷主間で情報共有できる「動態管理プラットフォーム」を発表した。
traevoは2022年4月13日、車載機器のメーカーを問わず、車両の位置情報などを一元的に管理し、運送事業者や荷主、着荷主間で情報共有できる「動態管理プラットフォーム」を発表した。同日から無料トライアルを開始し、サービスの提供開始は同年9月1日を予定する。利用料金は1車両当たり月額1000円以下での提供となる見通し。
既存デバイス/サービスのみでデータ連携可能
traevoは運輸ビジネスデジタル協議会(TDBC)が構築を進めてきた「TDBC動態管理プラットフォーム」の社会実装を担う事業会社として、2022年1月に設立された。運輸ビジネスデジタル協議会は運送業界の中小企業が抱えるさまざまな課題を解決するため、テーマごとのワーキング活動を通じてICTなどを活用した実証実験や成果発表を行う組織である。traevo 代表取締役社長には鈴木久夫氏が就任している。
動態管理プラットフォームは運送事業者とその協力企業などのトラックに搭載した、デジタルタコグラフやドライブレコーダー、GPS端末や、スマートフォンの位置情報共有サービスなどから車両動態データをAPI経由で取得し、一元的に管理、可視化する。車両動態データは荷主、運送事業者、集荷主などのステークホルダー間でリアルタイムで共有できる。
車両の情報公開は、当該車両を有する会社に公開依頼を出し、許可された場合に閲覧可能となる。異なるメーカーの車載機器から取得した車両動態データも、同一プラットフォーム上でまとめて表示できる。既存のデジタルタコグラフなどのデバイスや、他の車両動態管理サービスを活用するため、データ収集のために新たに機器を設置する必要はない。データ収集の対象となる機器やサービスのIDを申請すれば、動態管理プラットフォーム上での管理が可能になる。
また、動体管理プラットフォームを追加開発して、車両のCO2排出量を可視化する仕組みづくりも計画しているという。位置データ(GPSデータ)を走行距離に変換するとともに、燃費の実測値を取得してCO2排出量を算出することで、燃費向上や積載率改善に向けた支援を提供する。
1万7000時間分の業務削減に成功
運送業界では、荷主から受け取った荷物を元請企業が下請け企業に配送を依頼し、さらにその企業が下請け企業に依頼するという多重下請構造が散見される。下請けの各企業間では、デジタルタコグラフなど車両動態情報を収集するデバイスやサービスのメーカーが異なるため、機械の仕様の違いからデータ取得や連携の仕組みを構築しづらいという問題があった。このため、鈴木氏は「車体の位置情報といった基本的な情報も取得できず、交通渋滞に巻き込まれた際も電話などアナログな伝達手段で遅延連絡をせざるを得なかった」と語った。
動態管理プラットフォームを通じたデータ活用はこうした業界固有の課題解決に寄与するとともに、サプライチェーン全体の生産性を向上させる可能性がある。運送事業者は連絡や報告業務の自動化、省力化に加えて、リアルタイムでの状況把握や運行指示を実現できる。荷主や着荷主も各種管理工数を削減しやすくなる。
TDBCが実施した実証実験によると、動態管理プラットフォームを導入した20台の車両を運用する物流事業者では、連絡、報告業務にかかる時間を1カ月当たり約304時間削減できたという。この他、荷主である自動車部品メーカーは、配送ダイヤの作成や同乗調査といった管理業務時間を1年で約1万7000時間削減して、また、着荷主である自動車メーカーは外注運航実績の報告や聞き取り、転記業務などを廃止して、約9200万円削減することに成功したという。
traevoは今後、プラットフォームの利便性向上や、対応可能な車載機器の拡充などを進めるとともに、物流ネットワーク単位での利用を促進する。2025年までに貨物用車両20万台での利用を目指す。
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