AIで物流施設内のデータをリアルタイムに統合管理する新システム:物流のスマート化
物流のスマート化に取り組むスタートアップGROUNDは2021年6月15日、物流施設統合管理/最適化システム「GWES」を同年8月2日に提供開始すると発表した。また、トラスコ中山が2024年に本格稼働を予定している物流施設「プラネット愛知」にGWESを導入する計画も説明した。
物流のスマート化に取り組むスタートアップGROUNDはGROUNDは2021年6月15日、東京都内で会見を開き、物流施設統合管理/最適化システム「GWES(GROUND Warehouse Execution System)」を同年8月2日に提供開始すると発表した。また、同社と資本業務提携を締結したトラスコ中山が2024年に本格稼働を予定している物流施設「プラネット愛知」(愛知県北名古屋市)にGWESを導入する計画についても説明した。
庫内状況のデータを統合、リアルタイムで可視化
GWESは倉庫実行システム(WES:Warehouse Execution System)として、物流施設内の設備や状況を統合管理するためのミドルウェアとなる共通データ基盤や、AI(人工知能)を適用したモジュール群で構成されている。
従来、倉庫物流では倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)や基幹システム、商品データベースなどを一元的に把握することが困難で、庫内状況を正確に分析する手段の確保が課題だった。WESはこうしたシステムや庫内状況のデータを集約、統合して、リアルタイムに可視化する役割が期待されている。
具体的には「物流施設の可視化」「業務自動化リソース最適化」「ハードウェアやソフトウェアの統合管理」「物流施設内地図のデジタル化」の4機能を提供する。各機能を実現するためのモジュールが個別に存在しており、顧客の要望や課題に合わせて段階的に導入することも可能。
「物流施設の可視化」は、作業の進捗状況をリアルタイムで可視化する他、翌日以降の作業量をシミュレーションできる機能だ。WMSなどと連携して、作業の実績データを集計、分析することで工程別の作業量や時間帯別の作業実績を確認できる。地図作成モジュールを活用することで、物流施設の地図上に在庫状況を反映して可視化することもできる。
「業務自動化/リソース最適化」は庫内で稼働するフォークリフトやロボットの積載量や状態に基づいて、ピッキング順序などを制御する。ピッキング作業時の移動距離を低減する効果などが期待できる。また、作業効率や保管効率が高い在庫配置を自動提案する。
「ハードウェアやソフトウェアの統合管理」はWMSや倉庫制御システム(WCS:Warehouse Control System)と連携して、物流施設内のハードウェアやソフトウェアの情報を統合管理する接続基盤である。システム連携時にWMSやWCSなどのデータは、GWESに対応した標準データ形式に自動変換される。
「物流施設内地図のデジタル化」は、日々行われる庫内レイアウト変更の情報や動線ルールなどを反映した、最新の物流施設内の地図情報を確認できる機能だ。国内物流業界では庫内地図をExcelやパワーポイントで作成することも多いが、これを庫内状況を可視化する上で利用しやすいデータ形式に置き換える。
GWESを経営戦略の中核に
また、GROUNDは今後、GWESを中核とする新事業戦略を展開していくことも発表した。同社 代表取締役社長 CEOの宮田啓友氏は「メーカーフリーで多種多様なロボットやマテハンなどのハードウェアやWMSを中心としたソフトウェアをつなぎ合わせ、物流施設内で最適かつ高度なオペレーションを実現できる環境を構築するのが目標だ。当社ではGWESなどを用いて、最新技術とともに進化していく次世代型物流施設を『Hyper Warehouse』と呼んでいるが、この普及に尽力する」と語った。
GWESの導入を予定しているプラネット愛知は想定倉庫面積8万3269m2、入荷行数は1日あたり1万5000行、出荷行数は同5万行で、トラスコ中山の物流施設の中で最大規模の施設となる見通し。トラスコ中山はこれまでにGROUNDとAI物流ソフトウェア「DyAS」の実証実験を共同で実施した実績がある。
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