ラズパイでそのまま動くが優位性に、エッジAIのIdeinがアイシンとの協業を深化:人工知能ニュース(2/2 ページ)
AIスタートアップのIdeinがエッジAIプラットフォーム「Actcast」の事業展開を紹介。会見には協業パートナーのアイシンも登壇し、これまでの開発成果に加え、自動バレー駐車システムや、自動運転バスなどへの搭載を想定しているマルチモーダルエージェント“Saya”の開発状況を説明した。
トヨタ「Advanced Drive」向けの開発がきっかけに
Ideinの創業から2年後の2017年から協業を重ねてきたのがアイシンだ。同社が開発していたトヨタ自動車の高度運転支援システム「Advanced Drive」向けのドライバーモニターシステムにおいて、顔特徴点や装着物判定、視線検出など数十種以上のAIを設計していたが、これらを廉価なCPU上に搭載する必要があった。アイシン 先進開発部 主席技術員の大須賀晋氏は「既に使用するハードウェアとArmコアのプロセッサが決まった状態で、そこでこれらのAIを何とか動かすためにIdeinの協力を仰いだ。そして、3〜4カ月程度で成果を出してもらえた」と説明する。
そこからの縁もあって2018年にはIdeinとアイシンで資本提携を結んだ。顧客企業からの出資はアイシンが1社目だった。それ以降協業する分野を広げており、現在は、教育出向の形でアイシンの社員数人がIdeinで働くなど関係も深くなっている。
会見では、現在進めている協業の事例として「自動バレー駐車システム」と、「マルチモーダルエージェント“Saya”」について紹介した。
自動バレー駐車システムは、ホテルなどで人手で行われているバレー駐車サービスを自動化するシステムである。アイシンの社内に整備された自動バレー駐車エリアで実証実験が進められている。車両乗降場として設定された駐車スペースに駐車した後、AIエージェントによる駐車の受付を終えれば、駐車した車両は車載AIカメラと駐車場内のインフラカメラを用いて周囲を認識しながら自動で移動して空きスペースに駐車する。インフラカメラはActcastを用いており、車載AIカメラの処理結果とクラウドで認識結果を統合するなどしている。また、AIによって駐車場内のマップ生成と自己位置推定も行っているという。
一方、マルチモーダルエージェント“Saya”は、自動バレー駐車システムで受付を行うAIエージェントや自動運転バスなどでの利用が想定されている。CGモデルには、フルCGの女子高生キャラクター「Saya」を用いており、音声認識とルールベース応答検索、音声合成と会話内容と合わせたリップシンクなどに必要な自動行動生成のアルゴリズムを組み合わせることで、人との会話がより自然に行えるようにしている。自動運転バスの事例では、乗客の顔と名前を覚えて、その上で親密に声をかけるなどの会話もできるようになっていた。
マルチモーダルエージェント“Saya”は、フルCGキャラクターとしての高度なグラフィックス処理とさまざまなAI処理を行うために、インテルの「Core i9」とNVIDIAの「RTX 3090」を搭載する高性能PC2台を用いている。Ideinとの開発では、これらPC2台で行っている処理をNVIDIAの組み込みコンピュータ「Jetson AGX」1台に集約する取り組みを2022年6月をめどに進めている。「これによって、マルチモーダルエージェント“Saya”をさまざまな場所で活躍させられるようになる」(大須賀氏)という。
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