エッジAIの「iモード」目指すベンチャーが始動、NTTドコモや清水建設などが出資:人工知能ニュース(1/2 ページ)
エッジAI関連事業を手掛けるベンチャー・EDGEMATRIXが事業戦略について説明した。米国クラウディアンの日本法人メンバーが中心になって2019年7月にスピンアウトした後、NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルの3社から9億円の資金を調達しており、エッジAI事業の本格展開を始める。
エッジAI(人工知能)関連事業を手掛けるベンチャー企業のEDGEMATRIXは2019年8月29日、東京都内で会見を開き、同社の事業戦略について説明した。ビッグデータストレージを扱う米国クラウディアン(Cloudian)の日本法人メンバーが中心になって同年7月にスピンアウトしたEDGEMATRIXは、NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルの3社から9億円の資金を調達し、エッジAI事業の本格展開を始める。2020年4月には、AI関連のパートナー候補企業と協力して、エッジAIアプリケーションの活用を広げるためのエッジAIプラットフォームの商用サービスを開始する方針だ。
会見の登壇者。左から、清水建設 執行役員の関口猛氏、EDGEMATRIX 副社長の本橋信也氏、同社 社長の太田洋氏、NTTドコモ 執行役員の谷直樹氏、米国Cloudian Holdings CEOのマイケル・ツォー氏(クリックで拡大)
エッジAIの水平展開に商機あり
エッジAIとは、現時点でクラウド上で運用されることが多いAIの学習や推論アルゴリズムの実行を、データを収集するカメラやセンサーなどの近傍に設置したエッジデバイス上で運用するAIのことを指す。取得したデータをそのままエッジデバイス上で処理するのでクラウドに大容量のデータを送る必要がなく、AIの処理結果をリアルタイムに反映できるとともに、セキュリティ面でも優位性があるといった特徴がある。
EDGEMATRIXは、カメラで取得した映像データを用いる、IVA(Intelligent Video Analytics)にフォーカスしたエッジAIに注力して事業を展開していく構えだ。同社 社長の太田洋氏は「当社はエッジAIのアプリケーションそのものを手掛けるわけではない。現時点において、さまざまな用途で一品物として提供されているエッジAIアプリケーションを汎用的なものとし、利用を広げていくために“水平方向”の事業を展開していく」と語る。
EDGEMATRIXの事業は3つある。1つ目の「エッジAIデバイス事業」では、独自開発のエッジデバイス「Edge AI Box」を3つのグレードで用意している。高性能モデルのAdvanceは、インテルの「Core i7」とNVIDIAの「Tesla-T4」を搭載しており、2020年には5Gの通信にも対応する予定だ。ミッドレンジのStandardは、NVIDIAの「Jetson TX-2」がベースになっており、防水・防塵(じん)性能を持つ屋外利用が可能なモデルも用意する。また2019年内には、NVIDIAの「Jetson Nano」をベースとする普及価格帯のLightも投入する予定だ。
2つ目の「エッジAIソリューション事業」は、PoC(概念実証)や実証実験止まりになりがちなAI開発の現状に対して、パートナー企業と共同して実用化可能な形でカスタムソリューションを開発していく。EDGEMATIRIXに出資した清水建設とは、スマート工場向けのAIソリューション開発が最初の接点となり、現在はスマートビルディング向けIoT・AIプラットフォームの共同開発なども進めている。また、AIソリューション開発の他にも、現場に最適な形でAIアプリケーションを実装するためのAIインテグレーションにも注力するとしている。
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