複数のAIアクセラレーターを内蔵した試作チップの動作を確認:人工知能ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構と産業技術総合研究所、東京大学は、AIアクセラレーター向け評価プラットフォームの実証にあたり、仕様が異なる6種類のAIアクセラレーターを内蔵した試作チップ「AI-One」を設計し、動作を確認した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2022年3月22日、産業技術総合研究所および東京大学と共同で、仕様が異なる6種類のAI(人工知能)アクセラレーターを内蔵した試作チップ「AI-One」の動作を確認したと発表した。
3者は、エッジ向けAIチップの設計を容易にすべく、東京大学浅野キャンパス内の武田先端知ビルにAIチップ設計拠点を設立し、設計環境の整備を進めている。AIアクセラレーター向けの評価プラットフォーム構築もその1つだ。
同評価プラットフォームの実証にあたり、CMOS 28nmプロセスを用いたAI-Oneを設計した。AI-Oneは、アクセルやディジタルメディアプロフェッショナル、プリバテック、LeapMind、ロジック・リサーチの協力を得て、6種類のAIアクセラレーターを搭載している。
外部の製造会社で実チップを組み立てて評価ボードに実装し、チップを評価した結果、各AIアクセラレーターからLPDDR4メモリへのフルバンド幅(24.8GB/s)でのデータ転送を確認した。CPUからLPDDR4メモリへの読み書き動作(フルバンド幅での室温下8時間動作)や、設計時に各検証項目で確認した機能が設計通りに動作することも確認できた。
また、先述の協力会社は、AI-Oneに搭載した自社のAIアクセラレーターを評価し、6種類のAIアクセラレーター全てが設計通りの周波数で動作することを確認した。引き続き、各AIアクセラレーターの消費電力や性能の比較評価を進めて、評価プラットフォームの改善に活用する。
同評価プラットフォームを用いることで、中小企業やベンチャー企業は、AIチップを擬似的に作成できるため、短期間かつ低コストでAIチップを開発可能だ。NEDOによると、開発期間を従来の45%以下に短縮できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 実効効率で世界トップクラスのエッジAIプロセッサアーキテクチャ、東工大が開発
NEDOと東京工業大学は、エッジ機器で高効率なCNN(畳み込みニューラルネットワーク)による推論処理が可能なプロセッサアーキテクチャを開発したと発表した。同プロセッサアーキテクチャに基づく大規模集積回路(LSI)も試作し、「世界トップレベル」となる消費電力1W当たりの処理速度で最大26.5TOPSという実効効率を確認している。 - 6種類のAIアクセラレーターを集積した評価チップの試作を開始
新エネルギー・産業技術総合開発機構らは、AIアクセラレーター向け評価プラットフォームの実証として「AI-One」を設計し、試作を開始した。今後、AI-Oneの評価をもとに、短期間、低コストでAIチップを設計、評価できる手法を確立していく。 - 電力効率10倍以上、SLAM処理時間が20分の1のエッジAIチップを開発
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、「ハイブリッド量子化ディープニューラルネットワーク(DNN)技術」「進化型仮想エンジンアーキテクチャ技術(aIPE)」「リアルタイムSLAM処理技術」を開発した。 - ヤマハ発動機と共同開発した小型の組み込み単眼カメラシステムを受注開始へ
ディジタルメディアプロフェッショナルは、ヤマハ発動機と開発した小型の組み込み単眼カメラシステムの受注を開始する。組み込みカメラモジュールとFPGAモジュール、拡張モジュール、SDKで構成している。 - 応用範囲を拡大、超低消費電力AI推論アクセラレーターIPの最新版を発表
LeapMindは、超低消費電力AI推論アクセラレーターIP「Efficiera」の最新版「Efficiera v2」を発表した。民生機器、産業機器、ロボットなどさまざまなエッジデバイスへディープラーニング機能を組み込める。 - 人とAIが共に進化するための次世代人工知能技術の開発事業を開始
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」を2020年度から2024年度までの5年間のプロジェクトとして開始する。