デンソーの電動化製品が「bZ4X」と「ソルテラ」に採用、走行中除霜などで世界初:電動化(2/2 ページ)
デンソーが新型EVであるトヨタ自動車の「bZ4X」とSUBARUの「ソルテラ」に採用された電動化製品について説明。新開発品としては、電流センサー、充電/電力変換/電力分配の各機能を集約したESU、大気中の熱をエアコンの熱源とする高効率エコヒートポンプシステム、乗員の膝元を暖める輻射ヒーターが採用された。
高効率エコヒートポンプシステムと輻射ヒーターがEVの課題解決に貢献
EVの課題として挙がる走行距離の延長やバッテリーの長寿命化に大きな影響を及ぼすのが、暖房や冷房、バッテリーの冷却などに用いられるヒートポンプシステムである。大気の熱をくみ上げて暖房に活用するなどしてバッテリーからの電力使用を抑えられれば走行距離を延長でき、充放電時に発熱するバッテリーの冷却を効率的に行うことで長寿命化にもつなげられる。
今回開発した高効率エコヒートポンプシステムでは「走行中除霜機能」「冷凍サイクルのレシーバーサイクル化」「各水回路の熱連携」「高性能小型チラーによる電池冷却性能の向上」を実現した。
冬場などの低温環境下では、車両前部のフロントグリルなどに設置されているコンデンサーへの着霜が起こきやすく電費性能を下げる要因になっている。従来は、車両停止時に霜を落とす除霜を行っていたが、今回開発した「走行中除霜機能」は、電動駆動ユニットの廃熱や暖房熱を活用することで「世界初」(デンソー)とする走行中の除霜を実現した。
「冷凍サイクルのレシーバーサイクル化」では、緻密なサイクル制御と多機能弁の「MCV-e」を活用した放熱量の調整機能によって非常に簡素な構成のレシーバーサイクル化を実現した。一般的なヒートポンプシステムで用いられるアキュムレーターサイクルと比較した場合に、冷房性能を向上するとともに冷凍サイクル内の部品点数を大幅に削減できている。
「各水回路の熱連携」では、冷却水を制御するMCV-eによって、ヒートポンプシステムにおける「高温水回路」「低温水回路」「冷凍サイクル」の熱連携を実現した。各水回路の機能統合でシステムを簡素化できるので、品質の確保と多様なニーズへの拡張性も向上できるとしている。
「高性能小型チラーによる電池冷却性能の向上」によって、バッテリーの長寿命化に貢献した。バッテリーの急な温度上昇を抑えることでエネルギー出力を保持しつつ、高出力で放電する高速走行時などバッテリー温度の変化が著しい環境下でも効率的なエネルギーの使い切りを実現できるという。
冬季のEV利用で走行距離に大きな影響を与えるのが暖房だ。そこで、乗員ごとにより効率的な暖房を行うために開発したのが輻射ヒーターである。輻射ヒーターは、ヒーター表面からの輻射熱によって効率的に乗員のみを暖め、ヒートポンプシステムと併用することで車両全体の空調エネルギーを低減し、暖房使用時の走行距離延長に貢献する。
ヒーター表面には薄膜フィルム構造を採用しており、約1分間で100℃以上まで昇温し乗員の膝元を素早く暖められる。100℃以上になるヒーター表面に人体が接触するとやけどなどのリスクがあるが、瞬時に表面温度を50℃以下まで下げる「世界初」(デンソー)のヒーター構造と制御技術によって安全性を両立した。人体の接触を感知して発熱を止めるセンサーを薄膜フィルム構造側にも内蔵しており、乗員が長時間ヒーター表面に接触し続けるような場合でも安全性を確保できるようにしている。
なお、輻射ヒーターを採用しているのはbZ4Xのみである。ヒーター部に独自のハイテン構造を採用するなど、大量生産や低コスト化に加えて半導体の安定供給などの面で今後改良余地があるとしている。これらの課題を解決できれば、ソルテラをはじめさまざまなEVへの採用拡大も期待できそうだ。
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