ニコンは2025年度に売上高7000億円へ、光学/EUV関連部品が成長けん引:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ニコンは2022年4月7日、2030年に向けた2022年度から2025年度にかけての中期経営計画を発表した。主要事業の安定化や成長事業の拡大、ソリューション提供力の強化などを通じて、2025年までに7500億円の売り上げ達成を目指す。
デジタル露光や光学/EUV関連コンポーネントの成長促進
映像事業の戦略としては、プロ/趣味層向けのミラーレスカメラを中心とする高付加価値製品の展開や、レンズライアップの拡充、動画クリエイター向けの機能強化などを行うことで、事業の安定性を図るとした。同事業領域の注力分野(「成長ドライバー」)としては「映像コンテンツ」を挙げる。メタバースなどxR技術の社会的普及に合わせて、高品質なボリュメトリックビデオや3Dキャプチャーなどの領域を開拓していく。
精機事業では、FPD露光装置における次世代パネルに対応するための高精細化と高生産性の確保、半導体露光装置における3次元化への対応などを通じた新規顧客の開拓を進める。サービス面では、既存設備のライン移設や改造工事、保守備品供給などを着実に行う。
成長ドライバーは「デジタル露光」である。現在、ニコンは、フィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったように、露光装置についても、フォトマスクを使わずにマイクロミラーデバイスを用いてデジタル入力した回路パターンを直接ウエハーに転写する技術を開発中だ。高速試作や多品種大量生産に対応しやすく、フォトマスク不使用によるコスト削減効果も期待できる。現在、同社は実用化に向けた取り組みを進めているという。
ヘルスケア事業では、生物顕微鏡におけるデジタル化やアプリケーション開発の強化、原価低減による収益性向上、網膜画像診断機器における診断の高度化や在宅化、遠隔診断などへの対応、細胞受託生産における国内最大級の生産能力を生かした再生医療薬などの事業本格化を進める。
成長ドライバーは「細胞受託生産や創薬支援」である。再生医療用細胞の安定培養を通じて、受託生産拡大を図る。
コンポーネント事業では、EUV関連コンポーネントにおける生産能力増強や高開口数対応、エンコーダーにおける協働ロボット向けのモジュールへの注力などを進める。半導体市場では、半導体の高密度化や高精度化、高耐久化、微細化のニーズが高まっているが、この中で、ニコン 取締役 兼 専務執行役員の徳(実際は、漢字右側の心の上に一が入る)成旨亮氏は、「当社の光学部品やコンポーネントへの引き合いも高まっており、市場全体の拡大と共に着実に成長する」と語った。成長ドライバーは「光学コンポーネント」と「EUV関連コンポーネント」を挙げる。
デジタルマニュファクチュアリング事業では、成長ドライバーである「材料加工」と「ロボットビジョン」を中核に、宇宙産業などの新興市場や、製造業のデジタル化ニーズへ対応を進める。宇宙産業における材料加工の高精度化や、風力発電やガスタービンの発電効率向上、自動車やエレクトロニクス製品などの製造ラインにおけるピック&プレースの高度化/効率化などを支援する。
馬立氏は「当社は2030年頃には人と機械が共創する社会が到来すると見込んでいる。その前段である2025年までに、顧客課題を解決するために必要なことを真摯に考えて、完成品販売だけでなくソリューション提供をビジネスの中核に据えて、事業安定化と収益性拡大を両立し、目標を確実に達成するようにしていきたい」と語った。
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