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機械要素部品から得るデータを新たな価値に、THKのデジタル変革モノづくり最前線レポート

2021年12月にリアルおよびオンラインで開催された「新価値創造展2021」(リアル展2021年12月8〜10日、オンライン展同年12月1〜24日)でTHK 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長の寺町崇史氏が「THKが挑むデジタル変革〜機械要素部品メーカーの新たな可能性〜」をテーマに講演した。

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 2021年12月にリアルおよびオンラインで開催された「新価値創造展2021」(リアル展2021年12月8〜10日、オンライン展同年12月1〜24日)でTHK 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長の寺町崇史氏が「THKが挑むデジタル変革〜機械要素部品メーカーの新たな可能性〜」をテーマに講演した。

機械要素部品からデジタルサービスへ

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THK 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長の寺町崇史氏

 THKは、産業機器事業と輸送機器事業を主力に事業拡大を続けており、最近ではグローバルでの生産および営業拠点での拡充、新規分野の展開、さらにビジネススタイルの変革に合わせ、デジタル技術を活用したサービス領域の拡大に取り組んでいる。具体的な取り組みとして、産業機器事業において「Omni THK」と「OMNI edge」という2つのサービスビジネスを開始した。

 「Omni THK」は顧客や代理店とのコミュニケーションを対面中心から対面と専用Webサービスのハイブリッドに変えていくことで、顧客、代理店の満足度や生産性向上に貢献することを目指している。 一方、製造業向けIoT(モノのインターネット)サービスの「OMNI edge」は第一弾のアプリケーションとして、予兆検知サービスの提供を始めた。今後もさまざまなアプリケーションをリリースして顧客の設備総合効率(OEE)の最大化に貢献することを目指している。

 製造現場では人を中心にさまざまな技能が継承されてきたが、労働人口の減少などもあり、難しい状況が生まれている。例えば、ベテランの勘と経験でメンテナンスや部品の交換のタイミングを判断していたが、若手や社歴の浅い社員に伝承されず、ベテランが定年退職してしまったというケースなど、技術継承がモノづくり企業にとって最重要課題となってきている。

 また、人材不足により現場の従業員の数が減り、1人当たりが担当する設備台数が増え、保全業務の負担が高まっているという課題や、納期のかかる部品やその在庫の金額負担を減らしたいなどの課題などもよく聞く問題であり「THKとして部品提供だけでなくこれらの困りごとを何らかのIoTを活用したサービスで解決しようと考えた」と寺町氏は語る。

 ただ、これらの仕組みを新しい設備に入れ替えて行うのでは、全てをそろえるための負担が大きくなりすぎて現場では受け入れられない。そこで「新しい装置にIoT機能を加えるだけではなく、既に現場で稼働している装置に後付け(レトロフィット)で対応し、すぐに実行でき広く利用してもらえるIoTサービスを出発点として考えた」(寺町氏)。

機械から取るデータで得られる価値を拡大

 この発想で開発したのが「OMNI edge」である。「OMNI edge」はTHK製のリニアモーションガイド(LMガイド)やLMガイド型アクチュエータ、ボールねじの状況をセンサーで取得し、その状況をアンプから吸い上げて収集し、その情報を分析することで、故障を予知し、計画保全を行えるようにするサービスである。簡単、安全、初期コストゼロがコンセプトであり、現場でのネットワーク環境の構築までNTTドコモ、シスコシステムズなどのパートナー企業との協業でワンストップで実現する。センサーを後付けするだけで安心を手に入れることが可能で、既に数百拠点で採用されている。

 導入を後押しするために、「製造ゼロ待ちチケット」と「IoTリスク補償」の2つの安心特典なども展開。「OMNI edge」を設置している部品で閾値超過アラートが発報されて交換部品が必要になった際に「製造ゼロ待ちチケット」を使用すれば、待ち時間なく生産し、商品を届けるシステムを構築している。「IoTリスク補償」は、OMNI edgeの予兆検査機能が働かず、センサーを取り付けていた機械要素部品に損壊が発生した場合、原因箇所の機械要素部品そのものの価格と交換に関係する作業費を上限100万円まで補償する仕組みだ。この他、利便性を高めるためにFIELD system上で使用できるように対応したことに加え、海外での使用も対応するためグローバルSIMにも対応している。

 「OMNI edge」の提供にめどが立ったところで、組織変更も行いIoTイノベーション本部を立ち上げている。それまでプロジェクトベースだった体制から企画、開発、販促、営業ができる新組織となり、継続的な商品投入やサービスの拡大が継続的にできるようになった。同社では「これまで壊れない最高品質の部品を提供することを第一に努めてきたが、これからはそれに加えて、壊れる前に知らせる予兆検知を生かしながら、顧客の生産ラインを止めないことを目標とする」(寺町氏)としている。

 現在、OMNI edgeを導入している業界は自動車関連が約4割と最も高く、続いて食品、建材、素材などの産業が続く。装置別では工作機械が35%、専用装置20%、搬送機18%、成形機8%となっている。今後に向けては「OMNI edgeの販売を開始後、顧客との話の中で、故障ロス、段取りや調整ロス、立ち上がりロス、チョコ停や空転ロスなど、数多くのロスが存在し、その対応に悩まされていることが分かってきた。OMNI edgeは予兆検知により、まず故障ロスの削減の領域から取り組み、OEEの最大化に貢献できるソリューションをさらに広げて提供していく方針だ」と寺町氏は述べている。THKが提供する部品の範囲にとどまらず、さまざまな企業との協業を促進しソリューションの対象領域を広げていく方針だ。

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