2週間で砂漠を疾走するダカールラリーは、電動化技術を磨く過酷な実験室に:モータースポーツ超入門(12)(3/3 ページ)
1月1〜14日に行われた2022年大会では、世界的な脱炭素化の流れを受け電動マシンが初登場し、大自然を舞台にするダカールラリーは新たなステージに入っている。
過酷なダカールラリーも脱炭素へ
2022年で44回目を迎えたダカールラリー。この四半世紀でモータースポーツ業界を取り巻く環境は大きく変わり、足元ではカーボンニュートラルの実現、脱炭素化に向けた取り組みが強く求められるようになっている。モータースポーツの各カテゴリーで電動化の流れが進む中、ダカールラリーでも持続可能性への挑戦が始まった。
2022年大会はその第一歩となる。2030年までにローエミッションマシン(低公害車)だけで競技することを目指す「ダカール・フューチャー」計画の第1段階と位置付けられ、電気や水素、ハイブリッドなど次世代パワートレインの技術開発を自動車メーカーに促す新カテゴリー「T1アルティメット(T1.U)」を創設。アウディが電動ドライブトレインを搭載する「アウディRS Q e-tron」で参戦を果たした。
アウディRS Q e-tronは、シリーズハイブリッド方式を採用したダカールラリー史上初のモーター駆動のプロトタイプマシンだ。前後アクスルにはMGU(モータージェネレーターユニット)を搭載しており、これは電気駆動のフォーミュラレース「フォーミュラE」で使われたもの。わずかな変更を加えるだけでダカールラリーに流用できたという。MGUはホイールの回転運動を電気エネルギーに変換し、最大のエネルギー回生も行う。
バッテリーを充電する役割を担う内燃機関エンジンは、ドイツツーリングカー選手権(DTM)の「TFSIエンジン」を活用。高効率なエネルギーコンバーターとして利用している。高電圧バッテリーの容量は52kWh。実績のある丸型セルを採用し、冷却媒体を含むバッテリー重量は約370kgと公表されている。
アウディはダカールラリー参戦にあたり、「ダカールラリーのレギュレーションでは搭載する技術に関して大きな自由度が認められている。そのためアウディにとって完璧な試験場となる」と述べている。
大自然の中で戦うダカールラリー。この厳しい競技環境こそ、自動車業界が直面するカーボンニュートラルを実現するための車両技術開発の場として有効活用されていくに違いない。
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