東芝が描く2分割後の事業戦略、デバイス分野は5700億円の投資計画:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
東芝は2022年2月8日に開催した投資家向け説明会の中で、今後独立分社化を進める予定の、エネルギーやインフラ関連事業をまとめたインフラサービスカンパニーと、半導体やHDDなどデバイス系事業をまとめたデバイスカンパニーの事業戦略について発表した。
パワー半導体の生産能力向上目指す
以下では、デバイスCo.のセグメント別の事業戦略を概観する。
半導体事業の売上高は2021年度で3200億円であり、これを2025年度までに3700億円に成長させる計画である。佐藤氏は「最注力分野であるパワーMOSFETをはじめ、パワー半導体は成長が見込まれる分野と捉えている。車載分野や産業/FA分野向けの製品売り上げを伸ばすことで、2025年度までに年間9%の成長を見込んでいる」と語った。また、現時点で車載分野向けのパワー半導体の売り上げは90%が国内でのものだが、今後は海外のxEV市場へと本格展開を行うという。このためにフィールドアプリケーションエンジニアや品質サポート体制の強化、モデルベース開発対応の強化を進める予定だ。
パワー半導体の生産能力向上も目指す。製造子会社である加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)の既存棟に構築中の300mmウエハー対応のパワー半導体製造ライン(第1ライン)の量産開始時期を2022年度下期に前倒すとともに、さらに300mmウエハー対応の新棟(第2ライン)を建設し、2024年度から量産を始める予定だ。
HDD事業の売上高は2021年度で4100億円で、2025年度までに5100億円に成長することを目指す。データセンターなど大容量データ保管向けに今後大きな需要が見込まれるニアラインHDDの関連技術開発、生産能力強化に注力する。主力であるフィリピンの生産拠点への継続的な経営資源投入に加えて、中国にも生産拠点を新設することで、ニアラインHDDの生産能力を2025年度までに、2020年度比で約2倍にまで引き上げるとしている。
ニューフレアテクノロジーの事業戦略についても説明を行った。同社の売上高は2021年度で410億円で、2025年度までに890億円にまで成長させる計画である。今後は、電子ビームマスク描画装置とエピタキシャル成長装置の成長に注力する。
佐藤氏は「電子ビームマスク描画装置については、半導体の微細化需要からマルチビーム機の新規需要が大きく拡大すると見ている。マルチビーム機は2021年度から顧客への納入を開始しており、アジアや北米の複数顧客から引き合いを受けている。当社が市場シェア100%を占めるシングルビーム機で培った描画要素技術や、顧客関係基盤をマルチビーム機にも生かし、2023年度には市場シェア50%の獲得を目指す」と語った。
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