日立の「際」をつなぐロボティクスラインデモ、JRオートメーションが初お目見え:IIFES 2022
日立製作所は、「IIFES 2022」において、同社のロボット技術や制御技術、それらを組み合わせるロボティクスSI技術を示す「ロボティクスラインデモ」を披露した。
日立製作所(以下、日立)は、産業用オートメーションと計測技術の展示会「IIFES 2022」(2022年1月26〜28日、東京ビッグサイト)において、同社のロボット技術や制御技術、それらを組み合わせるロボティクスSI技術を示す「ロボティクスラインデモ」を披露した。
ロボティクスラインデモは、MES(製造実行システム)の指示に従って、大小2種類の異なるボトルを組み立てて出荷するという内容になっている。最初の工程では、ケース内にバラ積みで入っている大小2種類のボトルを3Dビジョンで認識してピッキングして仕分ける。この3Dビジョンには、2021年4月に買収したKyoto Roboticsの3Dロボットビジョンセンサー「TVS」を用いている。
ボトルの組み立て工程は、2019年に買収した米国JRオートメーションの組み立てプラットフォーム「Rotary Indexer」で行う。8角形形状のRotary Indexerは、コンパクトな設置面積の中にさまざまな組み立てプロセスを集積できることが特徴で、米国内では自動車部品、医療機器、小型精密機器などで採用されている。ロボティクスラインデモのRotary Indexerでは、ボトルの配置、注液、ボトルキャップの設置、キャップ締め、重量計測による検品、キャップへの印字、配送トレーへのパレタイズという7つの工程が行われている。なお、Rotary Indexerは今回が国内初披露となる。
キャップへの印字は、日立産機システムの産業用インクジェットプリンタ「Gravis UX2シリーズ」を用いている。毎秒33本というスピードでボトルキャップに印字できるため、Rotary Indexerにおける印字から、配送トレーへのパレタイズという流れを、ほぼ途中で止めずに済む。そして、ボトルがまとめられた配送トレーを搬送するのは、日立インダストリアルプロダクツのAGV(無人搬送車)「Racrew」である。
ロボティクスラインデモにおける製造指示を行うMESは日立の「FactRiSM」を用いている。FactRiSMからの指示は、OPC-UA通信を介して産業用コントローラー「HXII」に伝えられ、HXIIとつながるプラグラマブルコントローラー「EHVシリーズ」で各機器を制御するという構成になっている。
日立のロボティクスSIとしては、今回のロボティクスラインデモを構成する各技術要素だけでなく、ロボティクスラインをサイバー空間で構築した上で、フィジカル空間における実ラインと同期する形で検証や運用の有効性を確認できるサイバーフィジカルシステムの技術も強みになる。「生産ラインのシステム設計とシステム提供、工場IoTソリューションという3つの観点で『際』をつないで、製造業の効率化を支援していく」(日立の説明員)という。
関連記事
- 新CEOはユーザー企業出身、日立の産業・流通BUは「際」を乗り越えられるか
デジタルソリューション群「Lumada」が好調な日立製作所だが、製造業に向けたLumadaの事業展開と最も関わりが深いのがインダストリーセクター傘下の産業・流通BUである。この産業・流通BUのCEOに就任した森田和信氏に、今後の事業展開の構想などについて聞いた。 - 日立のAGV「Racrew」が躍進、サントリー最新工場の自動化も担う
製造業や物流業を中心に需要が高まるAGV(無人搬送車)。日立はこのAGV市場で2014年から「Racrew」を展開。サントリーグループのサントリー<天然水のビール工場>京都とサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場の2工場が、このRacrewを採用して自動化を推進している。 - 日立がロボットSI事業強化に向けさらなる一手、Kyoto Roboticsを買収
日立製作所とロボットベンチャーのKyoto Roboticsは、2021年4月1日付で日立がKyoto Roboticsの全発行済株式総数の約96%を取得し、子会社化したことを発表した。 - ロボットSIに注力する日立、ラインビルダーとしての実力もアピール
日立製作所は、「IIFES2019」において、ロボティクスソリューションの実機デモを披露した。前工程と後工程2つのセルから成る生産ラインであり、ラインビルダーとしての実力もアピールする内容になっている。 - 日立がロボット事業に参入する理由は「高度なシステム化力」
日立製作所は、東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」において、同社が注力しているロボティクス技術についての展示を行った。 - 日立がロボットSIを買収し北米ラインビルダー事業に参入、その2つの理由
日立製作所は2019年4月24日、米国のロボットシステムインテグレーター(ロボットSI)であるJR Automation Technologies(JRオートメーション)を買収し、北米において生産ライン構築を請け負うラインビルダー事業に参入することを発表した。買収金額は約1582億円となる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.