進む製造機械の「知能化」、学習済みAIを搭載する動きが拡大へ:MONOist 2022年展望(2/2 ページ)
AI(人工知能)の活用が広がりを見せている。こうした中で、新たな動きとして定着が進んでいるのが、工作機械や射出成形機など、製造機械へのAI機能の組み込みである。2022年はこうした動きがさらに加速し、AIの学習までを機械メーカーが担って出荷する動きが進む見込みだ。
AI関連技術の発展が機械への組み込みを加速
これらの機械への学習済みAIの搭載が進んできた要因として、これらを支えるAI関連技術が発展してきたことがある。1つは、機械が持つコンピューティングパワーでも十分な推論を駆動できる組み込みAI技術が発展してきた点が挙げられる。
例えば、三菱電機ではAIブランドを「Maisart(マイサート)」として展開しているが、機器に容易に搭載できるようなAIのコンパクト化や、AIの学習高効率化、ビッグデータの分析スピードの高速化など、現実的に機器に搭載できるようなAIの開発に注力している。実際にこれらのAI技術を活用し、三菱電機が展開するFA機器や工作機械、ロボットなどに組み込む動きが進んでいる。
また、AIに関するこれらの技術開発を進めるのに、機械メーカーがベンチャー企業との提携や、子会社を設立する動きなども数年前から進んでおり、これらの成果が徐々に形になってきたのが現在の流れだ。
先述のファナックの他、オムロンでは2018年にAIベンチャーのエイシングと提携し、制御機器向けAIエンジンを共同開発することを発表。エイシングが保有するAIアルゴリズム「ディープバイナリーツリー(DBT)」を活用し、エッジ領域でのAI活用向けの技術開発を進めている。
安川電機でもAIベンチャーのクロスコンパスと提携しAI開発の強化を進める他、2018年に産業用ロボット向けのAI(人工知能)ソリューション開発を行う子会社エイアイキューブを設立。モノづくり現場のデータを活用し、製造現場の課題解決につながるAI開発を推進している。
どのようにAIを新鮮な状態に保つのか
これらを背景に、学習済みAI機能を製造機械に組み込む動きは、さらに定着へと進み、AI活用の「導入時のハードル」は大きく下がってくる見込みだ。今後のポイントはいかにこのAIを新鮮な状態に保つのかということだ。先述したようにAIは学習をベースに価値を発揮するものであり、学習の範囲でしか求める結果を出すことはできない。一方で、製造現場は常に変化に満ちている状況だ。1日の中でも日照条件や温度や湿度などの変化もある他、年単位の季節変動などもある。一方で、経年劣化などのように徐々に変化していくという部分もあり、学んだ結果が徐々にずれてくるということが起こる。
学習済みAIを機械に組み込んで出荷すれば、導入前試験などを通じて、導入当初は求める判定精度などを出すことができるかもしれないが、条件が徐々に変わっていくことで、精度が出なくなる「AIの陳腐化」の問題が発生する。これらに対応するための「AIの保全」が今後のポイントになってくる。
従来の保全活動の中でAIメンテナンスを組み込む動きになるのか、遠隔監視などを組み合わせて、AIの挙動を監視する動きになるのか、現状ではさまざまな方向性が模索されている状況だが、今後は「導入後も価値を生み出し続ける」ところがポイントになってくるだろう。
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