日本HPが3Dプリンティング事業の好調さアピール、金属の国内展開は慎重に準備:3Dプリンタニュース(2/2 ページ)
日本HPは、報道関係者向け事業説明会をオンラインで開催。2021年11月1日に同社 代表取締役 社長執行役員に就任した岡戸伸樹氏が日本市場における事業戦略を説明。3Dプリンティング事業も注力領域の1つに掲げ、国内での活用事例などを紹介し、その優位性をアピールした。
「Jet Fusionシリーズ」国内活用事例
同社はHP Jet Fusionシリーズの活用が見込まれる、国内注力分野として、自動車/輸送機関、工作機械/ロボット、医療、コンシューマ製品の4つを挙げている。説明会では、これら領域における国内活用事例について紹介した。
自動車/輸送機関の事例では、日産自動車の取り組みを2つ紹介。1つは、生産終了となったヘリテージ車両の補修部品の共同開発とオンデマンド製造に、HP独自の3Dプリンティング技術「Multi Jet Fusionプラットフォーム」を活用した事例となる。なお、こちらの取り組みでは、SOLIZEと日本HPが3Dプリンティング技術を活用した補修部品の製造を支援している。
もう1つは、日産自動車における新車種の形状確認や実験用モデルの製作に、HP Jet Fusion 5200を活用した事例となる。従来使用していたSLS(粉末焼結積層造形)方式の3Dプリンタよりも造形開始から後処理完了までの時間を大幅に短縮できることから、製品開発期間の短縮に貢献できたという。
工作機械/ロボットについては、ロボコム・アンド・エフエイコムの事例を紹介した。同社は、福島ロボットテストフィールドに隣接するデジタル工場にHP Jet Fusion 5200を導入し、産業用ロボットハンドやドローンの造形サービスを展開。「従来の金属加工と組み立てによる製造では1つのロボットハンドを作るのに2週間以上かかっていたが、HP Jet Fusion 5200導入後はたった1晩でロボットハンドの製造が可能になった」(岡戸氏)。
医療に関しては、同じくHP Jet Fusion 5200による八十島プロシードの事例を取り上げた。同社は、HP Jet Fusion 5200を用いて、脳神経外科手術用の電動スクリュードライバーのバッテリーケースと基板ケースを造形し、全国の医療現場への展開を進めている。岡戸氏は「医療機器に求められる滅菌処理に耐え得る材料特性や特殊形状への対応が高く評価され、規制の厳しい医療分野で採用されるに至った」と述べる。
そして、コンシューマ製品については、Puma(プーマ)の子会社であるCobra Golf(コブラゴルフ)が展開するCobraブランドのゴルフクラブへの適用事例を紹介した。こちらの取り組み内容については「ゴルフクラブに革新をもたらす3Dプリント技術採用パター、Cobra Golfが製品化」の記事で詳しく取り上げている。
金属3Dプリンティング「HP Metal Jet」の展開は?
好調な樹脂に加え、今後の伸びが期待される金属3Dプリンティングについても、同社は「HP Metal Jet」の開発を進めており、引き続き、国内展開に向けた準備を続けているところだという。「多くの顧客から『HP Metal Jet』に対する問い合わせをいただいている。その一方で、われわれとしては、日本の市場ニーズにあった製品を届けるという使命があるため、海外で先行しているβユーザーの評価などをしっかりと見極めながら、慎重に展開を進めていきたい考えだ。そのため、現時点ではまだ具体的な日程(リリース日)を示すことはできない」(同社)。
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