2020年以上に大変だった、コロナ禍2年目の自動車業界を振り返る:いまさら聞けない自動車業界用語(19)(3/3 ページ)
一難去ってまた一難、2020年以上に苦しくなった1年でした。自動車業界では一体何が起きていたのか。実際の現場視点で、この1年をまとめます。
部品供給のピンチに現場はどう立ち向かったのか
次から次へと同時多発的に問題が発生する中、自動車メーカーとその仕入れ先の部品メーカーは「自動車メーカーのラインを止めない」「1台でも多くクルマを生産する」という目標のため、この1年一丸となって問題解決と調整に努めてきました。
部品の確保のため、ありとあらゆる方法が検討されました。例えば、サプライチェーンのどこにどれだけ在庫があって、枯渇日はいつになるのか。生産順番を変更することで、部品の出荷日を繰り上げられないか。土日の稼働を追加するなど生産数量を積み増しできないか。安全在庫を減らしたり、船から飛行機に運搬方法を変えたりすることで物流間の在庫を消費し、部品の欠品を防げないか。工程を変更し代替材料や工場で生産を行うことで在庫を補充できないか……など、さまざまな方法を模索しました。
工程変更に時間がかかり、間に合わないようであれば特急対応で評価、承認するというケースもありました。また、問題が発生すればすぐに共有し合い、週単位、日単位で状況の進捗を確認し、生産減を少しでも食い止めようとしてきました。自動車メーカーと部品メーカーはこれまでになく協力し合い、部品供給問題に取り組んだ1年といえるでしょう。
原材料費/物流費の高騰
サプライチェーンの問題は、部品の供給だけでなくその価格にも影響を与え、自動車に使われる原材料の値段はこの1年で高騰しました。問題となった半導体や樹脂はもちろん、主要部材である鋼材も値上げされました。自動車メーカーやサプライヤーの直近の決算でも、この値上げの影響は顕著です。
物流費に関しても、需要旺盛を根拠として海上輸送の費用は大幅に値上がりし、主要航路で過去最高値を更新しました。先述したように海上輸送は大混乱でしたので、部品の欠品を回避するためにコストアップ前提で飛行機での運送へ切り替えて対応している部品もあり、収益を圧迫する要因になっています。
小さな原価低減を積み重ねてコストを抑え、消費者に価格を抑えた自動車を販売する。日本の自動車メーカーはそうして世界でもトップクラスの地位を築いてきましたが、こうしたさまざまなコストの高騰が続くようであれば、今後自動車の価格にも影響が出てくるかもしれません。
まとめ
自動車業界にとって2021年は、部品の供給問題に苦しめられた1年でした。
これまで自動車業界は主要産業として重視され、優先されながら部品や材料を確保してきました。しかし、この1年で、半導体をはじめとする部品や原材料は「日本国内と同様の影響力が及ばない」「他国や他産業との奪い合い」などの要因により十分な供給を確保するのが簡単ではないと明確になりました。現場としても、生産量の変動への対応や部品の確保のために、これほど調整に見舞われた1年はありませんでした。これを機に、自動車業界ではサプライチェーンや在庫の在り方を再検証し、見直しが進むことでしょう。
2022年になればもろもろの状況は改善されるはず……なのですが、挽回生産のために過去最高レベルまで自動車メーカーの生産量が引き上げられた一方で、今回紹介してきた部品の供給問題の解消は持ち越しとなっています。しばらくは2021年と同様の対応が迫られそうです。
今度こそ、2022年は生産挽回の年へ。自動車業界の苦境はまだまだ続きますが、事態が一刻も早く良くなり、生産量が増えて消費者に自動車がいち早く届けられるように戻ることを祈っています。2022年が自動車業界にとって、いい年でありますように!
カッパッパ
ティア1サプライヤーで働く、入社10年を超えた中堅社員。普段は作業服に身を包み、工場と事務所、仕入れ先やお客さんとの間で、汗をかきながら現地現物をモットーに働く。Webでは「ええやん、日本自動車業界」のコンセプトのもと、現場目線で役立つ自動車関連ニュースを幅広くキュレーション。
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