日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから:品質不正問題(2/2 ページ)
日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた抜き取り試験(定期試験)がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。
福島工場では出荷検査に不適切な行為
サスペンション部品を生産する福島工場では、2000年ごろから出荷検査や定期試験の不適切行為が続いていた。
出荷検査では、フロントストラット、リアショックアブソーバー、ステアリングダンパー、セミアクティブショックアブソーバーの4製品について、「減衰力を規格値に収めるため、減衰力測定時の判定温度設定を変更」「減衰力規格要求値に対して、適合出力の許容範囲を取引先の指定を超えて設定」「取引先が要求する減衰力規格値から外れた製品を出荷」という不適切行為が確認された。
検査結果データが残っている2018年4月から不適切行為が是正されるまでの期間だけでも、対象は1010万本に上る。社内に残っていた試験データと取引先への報告書の食い違いから、2000年ごろまでさかのぼって発覚した。
フロントストラットとリアショックアブソーバーの2製品(5社に納入)の定期試験では、取引先と決めた規定値から外れた減衰力の実測値を、規定内の数値に書き換えて報告していた。記録が残っている2019年1月〜2021年10月の間に259件発生している。
出荷検査の不適切行為は、2021年7月に日立Astemoの品質保証部門の社員から日立製作所の品質保証部門と日立Astemoのコンプライアンス部門に情報提供があった。調査を経て出荷検査の不適切行為を確認するとともに、その後の調査で2021年10月に定期試験の不適切行為が発覚した。2021年10月までに、出荷検査と定期試験の不適切行為は是正されているという。
「安全性や性能に問題なし」
不適切行為の発覚を受けて、管理データ記録の解析を基にした強度や耐久性の再評価や、各部品の性能確認などを社内で行った結果、製品の安全性や性能に問題はないとしている。
サスペンション部品の減衰力に関する出荷検査が適切に行われていなかった件について、CEOのコッホ氏は「FMEA(故障の影響解析)の結果、減衰力がドライバーに及ぼす危険の影響は大きくはない」と述べ、安全性が保たれていることを強調した。性能面については、取引先の自動車メーカーとともに「再確認中」(コッホ氏)だという。
また、十分に余裕を持ったレベルに性能を設定して開発、生産しており、不適切行為に関連して安全性や性能に問題が発生したケースは確認されていないという。
事実関係や発生した原因を調査する特別調査委員会は、委員長の貝阿彌 誠氏(大手町法律事務所)、委員の松山遙氏(日比谷パーク法律事務所)と山田広毅氏(東京国際法律事務所)がメンバーとなる。
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