画像IoT基盤「FORXAI」が切り開く、コニカミノルタの成長担うインダストリー事業:製造業IoT(2/2 ページ)
コニカミノルタは、新たな事業成長の核となるインダストリー事業の概要と、その一角をなす画像IoT(モノのインターネット)ソリューション事業について説明した。
DNAである画像技術とIoT・AIを掛け合わせた「画像IoT」
会見後半では、コニカミノルタの成長に向け大きな期待を集めている画像IoTソリューション事業の詳細が説明された。同社 IoTサービスPF開発統括部 統括部長 兼画像IoTソリューション事業部 副事業部長の岸恵一氏は「当社はカメラ、複写機、画像診断機器などを手掛けてきたことから画像技術をDNAとして持っている。この強みにIoTとAIを掛け合わせたものが『画像IoT』だ」と述べる。
この画像IoT技術によって、モニタリング、検査の画像解析サービス市場における働く現場の進化、安全の実現に貢献するのが画像IoTソリューション事業になる。具体的には、モニタリングでは環境エネルギーや安全防災、検査ではスマートファクトリーなどが主な市場となる。
コニカミノルタの画像IoT技術の強みは3つある。1つ目は、企業としてのDNAである画像とメーカーとして実現可能なデバイスから成る「入力デバイス開発」である。2つ目の「データ学習→アルゴリズム開発」では、2015年から取り組みを進めることで構築した自社環境による開発基盤が最大の特徴になる。ここで開発したアルゴリズムを、顧客に提供するデバイスやシステムに実装する技術となるのが3つ目の「AIシステム開発」である。「当社はこれら3つの技術全てを持ち合わせており、さまざまに組み合わせることで顧客にソリューションとして提供している」(岸氏)。
また、モニタリングでは人行動と物体の検知を同時認識するAIで世界トップレベルの認識精度と処理速度を、検査でも外観検査における世界トップレベルの良否判定精度を実現しているという。また、高成長が期待されるインテリジェントカメラ領域では、子会社であるMOBOTIXとの共同開発や技術パートナーとの競争による開発スピードアップ、ソリューション化による売り上げ拡大などで競争力の強化を図っている。
そして、画像IoTソリューション事業を展開する基盤となるのが、画像IoTプラットフォームの「FORXAI(フォーサイ)」である。FORXAIは先見性(Foresight)とAIを社会のために(For X AI)という2つの思いを込めた名称となる。また、コニカミノルタの技術力だけでなく、技術パートナーやソリューションパートナーなどとのエコシステムによってデジタルソリューションを提供していくビジネスモデルを採用している。
同社 画像IoTソリューション事業部 FORXAI推進部 部長の京尾俊作氏は「顧客へのソリューション導入で終わりではなく、継続的にデータを解析して顧客が気付いていないことにアプローチする課題提起型アプローチをとっている」と説明する。
2020年10月の発表から約1年間でFORXAIのパートナー社数は35社まで増加した。これにMOBOTIXのパートナーを含めると、トータルで90社となる。
FORXAIを用いたソリューションの採用事例も2つ紹介した。まず、要介護者の状況を見極めて介護士が駆け付けるための介護ソリューションでは、要介護者を見守るカメラ、現在の状態を判断するAI、見える化を行うIoTプラットフォームを三位一体で提供することでシステム設置コストの70%削減に成功した。
次に、ガス監視による防災診断サービスでは、2022年3月リリース予定の業界最小、最軽量のハンディ型カメラを用いてガスの見える化や漏えい位置と漏れ流量の可視化を実現することで、MS&ADインターリスク総研との事業展開を見据えている。このガス監視技術はさらなる事業拡大も検討しており、LNGやアンモニアを扱う海上輸送や発電プラントにも適用できるとしている。
これらの他にもFORXAIを用いたパートナーとのソリューション展開を多数進めている。今後は、技術パートナーや顧客への販売チャネルとなるソリューションパートナーをつなげるコミュニティーサービスを2022年度からスタートさせて、さらなる事業拡大につなげたい考えだ。
そして、画像IoTソリューション事業の拡大に必要な人財の拡充も進める。画像IoT技術関連の人財数を、2021年度時点の650人から、2023年には1000人まで増やす方針。欧州と北米ではAIエンジニアやデータサイエンティストの採用活動を強化し、国内ではソリューションデベロッパーの育成に重点を置くとしている。
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