AIを用いて肺炎入院患者の経過を高精度に予測する技術を開発:医療機器ニュース
富士フイルムと名古屋大学は、AIを用いて、院内のさまざまな部門システムで管理している診療データを基に、肺炎入院患者の経過を高精度に予測する技術を開発した。
富士フイルムは2021年11月22日、AI(人工知能)を用いて、院内のさまざまな部門システムで管理している診療データから肺炎入院患者の経過を高精度に予測する技術を、名古屋大学と共同で開発したと発表した。
共同研究では、富士フイルムの医療機関向け総合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」のデータベースを活用している。CITA Clinical Finderには、電子カルテ、放射線部門情報管理システム、検体検査システムなどのさまざまな部門システムから、医師記録、看護記録、患者背景情報、入院診療計画、検査結果、処置情報など多様な情報が集約される。これらの情報に既往歴などの入院前情報も含めたデータを活用し、患者個人の状況に応じて肺炎の経過を予測する。
現在、肺炎の診療現場で経過予測に用いられているA-DROPスコアと、開発した予測技術について、値が1に近いほど予測精度が高いことを示すAUROC(受信者動作特性曲線下面積)を用いて比較した。その結果、A-DROPスコアが0.763であるのに対し、開発した技術は0.888と高かった。
また、今回の研究結果を解析したところ、経過予測の根拠となり、精度を高める上で貢献していた項目は、食事情報や臨床検査結果など実際に医療従事者が経過を予測する際に重視している項目と一致した。
肺炎は多くの臨床医が診療に携わる可能性が高い急性期疾患で、日本人の死亡原因の第5位とされている。これまではA-DROPスコアが入院患者の経過予測に用いられてきたが、同スコアは本来、入院時の重症度を評価するための手法であり、入院後の経過予測として利用するには精度に課題があった。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AIサポート機能を備えた内視鏡画像、レポート管理ソフトを発表
オリンパスは、AIサポート機能を備えた、クリニック向けの内視鏡画像、レポート管理ソフトウェア「Vivoly+」を発表した。診断に必要な画像を網羅しているか、適正であるかをAIが判断し、効率的な読影をサポートする。 - 宇宙では腎臓の遺伝子発現が変動し、血圧や骨の厚みが変化する
東北大学は、1カ月間の宇宙旅行から帰還したマウスの腎臓で、血圧と骨の厚さを調節する遺伝子の働きが変動していることを発見した。また、宇宙旅行で血液中の脂質が増加し、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加することも分かった。 - 光照射により、記憶が発生したシナプスのみ消去する技術を開発
京都大学は、シナプスのタンパク質を光照射により不活化することで、記憶を消去できる技術を開発した。また、脳の異なる部位に、学習直後やその後の睡眠中に記憶ができるシナプスがそれぞれ存在することを明らかにした。 - 工場やオフィス、店舗などの効果的な換気対策を3D計測とリアルタイム解析で支援
サイバネットシステムは、エリジオンの協力の下、室内の空気の流れをシミュレーション/可視化し、効果的な換気対策の実現を支援する「3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービス」の提供を開始した。 - 室温で簡単に製造できる、疑似固体リチウムイオン電池の3D製造技術
東北大学は、リチウムイオン伝導性イオン液体電解質の3Dプリント製造技術を開発し、任意の大きさと形状の固体リチウムイオン電池を、室温かつ短時間で3Dプリント製造することに成功した。 - スマートシューズを用いた医療分野での共同研究を開始
アシックス、ORFHE、セルソースは、スマートシューズを用いた医療分野での共同研究を開始する。まずは変形性膝関節症の改善に向け、治療する患者の歩行の特徴を定量化する取り組みを行う。