オリジナルG-SHOCK作成サービスを実現したカシオのサプライチェーンDX:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
キナクシスは2021年12月1日、サプライチェーンマネジメントのデジタル化をテーマとしたイベント「BIG IDEAS in Supply Chain|JAPAN」をオンラインで開催した。本稿では当日のプログラムから、カシオ計算機が展開する時計ブランド「G-SHOCK」のカスタマイズサービス「MY G-SHOCK」を支えるDXを解説したセミナーを抜粋して紹介する。
課題はECサイトと現場間でのデータ連携
サービス実現においてはさまざまな課題があった。上原氏は「例えば、組み立て現場で在庫切れを起こしたコンポーネントに関しては、ECサイト上でユーザーにその旨を伝えなければならない。ECサイトと組み立て現場間での双方向的なデータ連携が必要になるが、そこに幾つか解決しなければならない問題があった」と振り返る。
この組み立て現場での在庫切れに関連して解決すべき課題の1つが、ECサイト上でユーザーが選べる「コンポーネント」と組み立て現場で管理している部品単位(パーツ)が一致していないことだった。例えばECサイト上でユーザーはコンポーネントとして「盤面」を選択しカラーバリエーションを決定できるが、この盤面はLCDやガラス盤など複数のパーツを組み立てて構成される。このためデータ共有を円滑にするため、コンポーネントとパーツの対応関係を記載した「コンポーネント構成マスター」を新たに作成した。
共通パーツをどのように配分するか
もう1つの課題が、組み立て現場のパーツ在庫数を基にコンポーネントの組み立て可能数を算出する仕組みの構築だった。パーツには全コンポーネントで共有できるものと、コンポーネントごとに異なる種類が求められるものの2タイプがある。組み立て現場での生産個数は、共通パーツを各コンポーネントの組み立てにどのように配分するかで決まるため、単純にパーツの在庫数から組み立て可能個数を算出することが難しい。
そこで、キナクシスが展開するサプライチェーンマネジメントソリューションである「RapidResponse」を導入し、想定される各コンポーネントの需要数に応じて、共通パーツを最適に配分できるコンポーネント在庫算出エンジンを構築した。これによってECサイト上で、コンポーネント組み立て可能数に基づいた購入可否を表示できるようにした。
上原氏は「実際には共通パーツが複数存在し、特定のコンポーネント間での共通パーツというものも存在するため、非常に複雑な演算処理が求められることになる。高速シミュレーション処理を得意とするRapidResponseを活用することで、早期のエンジン実装が可能となった」と説明した。
My G-SHOCKの今後の展望について、上原氏は「欠品による販売機会損失をさらに低減するため、ユーザーの購買行動分析を基に製品の需要予測の精度向上などを図っていきたい」と意気込みを見せた。
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