コア3事業を2030年までに2.5倍の9000億円に、パナソニックの描くデバイス戦略:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニック インダストリー社は2021年11月19日、2022年4月から持ち株会社制への移行を控えた新体制の方向性について、同社社長の坂本真治氏による社長懇談会を開催し、報道陣の合同取材に応じた。
「FAソリューション」「電子材料」「コンデンサー」のコア3事業
これらの課題事業の整理が終わり、新体制においてはあらためて「FAソリューション」「電子材料」「コンデンサー」の3つをコア事業と位置付け、さらなる成長を目指す方針だ。
坂本氏は「ここまでは収益性を中心に考えてきたが、トップラインの成長を考えられるフェーズに入ってきた。成長に向けて、注力する領域の条件として、社会課題として継続的な進化が求められている領域で、さらにパナソニックとして固有の材料/プロセス技術で特徴が発揮できる領域であることだ。コア3事業についてはこれらを満たしている」と語っている。
FAソリューション分野については、現在でも産業用モーターおよびセンサー、コントローラーにおいて、成長著しい中国の設備向けでは大きなシェアを握っている。さらに中国では生産拠点なども抱えることから、新たに2021年4月から中国にBU(ビジネスユニット)を設置し、現地で地産地消を含め、あらゆる意思決定を迅速化し成長につなげていく。さらに、機械の稼働監視などのITソリューションの構築を独自で行えない中小のマシンビルダー向けに、モーターやセンサー、ソフトウェアを一括で簡易パッケージとして提案する取り組みを強化し、さらなる成長につなげていく考えだ。
「インダストリー4.0などで描かれた世界が広がっているが、マシンビルダーの中では中小企業も多く、現在要求される上位のITシステムへの情報連携などを独自で構築するのが難しい場合も多い。そこで、部品としてモーターやセンサーのみを提供するのではなく、これらのITシステム連携などの仕組みもまとめて提供することで、マシンビルダーの支援を進めていくという考えだ。商品の提案の方法を変えていく」と坂本氏は語っている。
電子材料については、現在でも基地局向け多層基板材料などさまざまな領域で強みを発揮しているが、さらに半導体が大きく変化する中で、先端半導体パッケージを先導するような材料開発に取り組む方針だ。「1つの電子材料を注文通り提供するだけでは解決できないようなことも多い。複数の半導体材料のすり合わせ提案を行うことで先端半導体に適合する特性などを生み出せる可能性もあり、先端開発技術などを組み合わせこうした領域を開拓する」(坂本氏)。
コンデンサーについては、導電性高分子コンデンサーなどで現在も強みを抱えているが、産学連携で設計・生産プロセスの高度化を図り、難易度の高い材料開発を行う。「現在は産学連携の開発などを進め、桁違いの大容量のスーパーコンデンサーで新たな蓄電用途が開発できないか検討を進めているところだ。車載のバックアップやデータセンターのバックアップなどの用途を想定しているが、現状ではコストが見合わない。2020年代後半には価格とバランスの取れたスーパーコンデンサーの提供をできるようにしたい」と坂本氏は語る。
2030年にはコア3事業で9000億円に
これらの取り組みを進めることで、コア3事業の売上高は、現状ではそれぞれ1000億円前後のところを2030年までに3000億円規模まで拡大する方針だ。「コア3事業は合計で9000億円規模に拡大していく方針だ。インダストリー社トータルの売上高は現段階では1兆5000億円を目標と置いているが、個人的には1兆8000億円は最低でも達成できると考えている」と坂本氏は目標について語っている。
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