自社技術を知ってもらうために知財を使ってできること:ベンチャーに学ぶ「知財経営の実践的ヒント」(3)(3/3 ページ)
貧困解決を目指すFinTechサービスを支える技術を保有し、知財ポートフォリオ形成による参入障壁構築を進めるGlobal Mobility Service。同社の知財戦略と知財活動からビジネス保護に使える知見を紹介する。最終回は知財を起点に国際的なビジネスマッチングを加速させる。
「SDGsと知財の関係性」に気付く社員も
当社のWIPO GREENパートナーとしての取り組みは、特許庁webサイト※4や科学技術振興機構(JST)の産学連携ジャーナル※5(CSRと事業を両立しているパートナー事例として)などで掲載いただいています。
その掲載の事実を経営会議で報告、Slackを通じて全社的に情報共有したところ、経営や現場のモチベーションアップにつながりました。加えて、商談などの対外的な説明の場でPR材料として活用できるなどの利点がありました。また、パートナーに認定されたことをキッカケに、「SDGsと知財の関連性」に初めて気付き、知財を身近に感じた社員も多くいたのです。
※5:産学連携ジャーナル SDGsに向けた環境政策WIPO GREENと日本の貢献
中小企業やベンチャー企業には、主要事業そのものがSDGsの達成を目標とするものである、あるいは、事業の一部がSDGsの達成に貢献し得るものであるといったケースが多数あります。社会貢献と事業の両立を図るには、自社の企業価値を向上し、さらには、自社のビジョンを実現するための仲間作りが必要です。
その「仲間づくり」のキッカケとして、WIPO GREENのようなプラットフォームを生かしてみてはいかがでしょうか。知財はビジネスマッチングにおいて“接着剤”のような役割を果たし得ると考えています。WIPO GREENを活用することで各社の社内外コミュニケーションが加速し、持続可能な社会の実現に近づくことを期待しています。
WIPO GREENは知財を切り口に、国連を通じてグローバルで自社の認知が向上される機会を獲得できる。これによって広報/IR活動に知財人財が関与する機会も拡がるのではないでしょうか。こうした観点から、筆者は知財人財の活躍の場を拡げる可能性をWIPO GREENに感じています。
なお、こうした点については知財ガバナンス研究会や、同研究会の知財情報活用分科会において、意見交換の場で話させていただいております。
終わりに
これまでの3回の連載で、事例を中心に実践的な知財活動のヒントをご紹介させていただきました。企業ステージ・企業規模の異なる3社での経験を生かし、私もトライアル&エラーを繰り返している最中です。
ご質問やご意見、ご感想等ございましたら、筆者プロフィール欄の連絡先よりお気軽にメッセージいただければ幸いです。
筆者紹介
高橋 匡(たかはし ただし)
コミュニケーション本部 知財グループ課長 AIPE認定 知的財産アナリスト(特許)
加工食品メーカー、刃物総合メーカーにて少数知財部門立上げを経験後、2021年より現職。
顧客視点での提案を強みとし、社内外におけるコミュニケーションを重視した知財活動に従事。
主な活動
2018年度特許庁事業「高度な民間特許情報サービスの発展に関する調査」にかかわるデザイン思考を用いたワークショップに参加。
2021年に知財ガバナンス研究会にメンバーとして参加し、知財情報を活用した社内外とのコミュニケーションの活性化検討する会(知財情報活用分科会)の発起人として副代表を務める。
同年、特許庁主催の第2回IPランドスケープセミナーにて講師を担当するなど、知財人財の育成にも携わっている。
Twitter
https://twitter.com/T_Tadashi0912
特許庁主催第2回IPランドスケープセミナー(第2部)講師(動画)
https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_coseview.aspx?JoqiTZZ2DWEYvYIe40bgoaPNpjpoT2h%2b5fe7wg9gAMudsPw%2f3EL68rd19zeU%2fndb#no-back
『一橋大学 吉岡(小林)徹 × GMS高橋匡 | スタートアップにおける知財』(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=aJZBQrQ3lEg
第57回知財実務オンライン「コミュニケーションを重視した知財活動」(動画)
https://youtu.be/lcyhgfi-Jw8
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