自社技術を知ってもらうために知財を使ってできること:ベンチャーに学ぶ「知財経営の実践的ヒント」(3)(2/3 ページ)
貧困解決を目指すFinTechサービスを支える技術を保有し、知財ポートフォリオ形成による参入障壁構築を進めるGlobal Mobility Service。同社の知財戦略と知財活動からビジネス保護に使える知見を紹介する。最終回は知財を起点に国際的なビジネスマッチングを加速させる。
グローバル環境技術プラットフォーム「WIPO GREEN」
WIPO GREENとは、国連の世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)によって2013年に設立された国際的な環境技術プラットフォームであり、データベースおよびグローバルネットワークを通じて環境技術の提供者とそれを利活用したい希望者をつなぎ、環境保全技術におけるイノベーションとその普及を目指す取り組みです。
より具体的には、WIPO日本事務所のウェビナー資料※3に分かりやすく説明されています。図2に示すようにWIPO GREENは環境関連の技術移転促進を目的としています。データベースに環境関連技術とそれら技術へのニーズが登録されており、これらを介したビジネスマッチングの場を提供しています。ビジネスマッチングを促進するプロジェクトも行われていますが、ライセンスなどの交渉は当事者同士に委ねられています。参加費は無料ですので、ベンチャー企業や中小企業でも着手しやすいのではないかと考えます。
※3:WIPO日本事務所主催ウェビナー資料(PDF) 2021年3月24日、40〜43ページ
大手企業と比較すると、ベンチャー企業や中小企業では自社が環境技術を保有していたとしても、技術の提供先を探す際のコンタクトポイントが圧倒的に少ないケースが多いと思います。WIPO GREENのように、国連が運営するプラットフォームに参加することで、自社の環境技術に即したニーズの登録者情報にアクセスできること自体に価値があります。
WIPO GREENにパートナーとして参加するためには、図3に示すようにWIPOとレターを交換するなど、簡素ではありますが手続きが必要です。レターにはテンプレートがあり、WIPO日本事務所に問い合わせすると最新のテンプレートを提供してもらえます。環境技術の提供者としてパートナー登録する場合は、WIPO GREENのデータベースに英語で環境技術の情報登録する必要があります。
パートナーは事業展開加速に不可欠
貧困と環境を解決する当社のFinTechサービスをグローバルに普及させるためには、金融機関をはじめ、世界のさまざまなパートナーとの提携が必要になります。その提携を加速させるために当社はWIPO GREENに参加したのです。
現在、世の中にはグローバルなビジネスマッチングサービスが多数存在します。そうしたサービスに比しても、国連の活動であるWIPO GREENのデータベースに登録する企業や団体の信用は高いと考えており、当社では提携先探索の主要なソースの1つとして位置付けています。
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