新たにリニア搬送システムやSCADAを展開、シュナイダーエレクトリックが強化:FAニュース(2/2 ページ)
シュナイダーエレクトリックは、スマート工場を中心としたソリューションを強化し、国内での展開を加速する。スマート工場化が進む中、従来のIoTゲートウェイに加え、新たにネットワーク機器の展開を開始する他、組み立て製造業向けのSCADA/HMIソフトウェアなどを投入する。さらに、市場が盛り上がりを見せるリニア搬送システムへの参入や、ソフトウェア中心の新たな制御システムの仕組みなどの提案も進める。
新たにリニア搬送システムへ参入
さらに、制御技術を生かして新たにリニア搬送システムにも参入する。リニア搬送システム「Lexium MC12マルチキャリア」を2021年12月に発売する。これは、ループ型のレール上にリニアモーターで駆動する複数のキャリアを走らせ、ワークを独立させて搬送、位置決めすることができる搬送システムだ。ループ形状にすることで、キャリアの始点や終点を考える必要がなく、受け渡しや原点復帰を省くことができ、シンプルな搬送設計を実現する。
キャリア1つを1軸のモーション制御と捉え、複数軸の同期制御を可能とするコントローラー「PacDrive」を活用することで、前後工程のモーション制御やロボット搬送などを含めたシステム全体で完全同期のプログラミングを実現していることが特徴だ。さらに、デジタルツインを実現できる専用ソフトウェアを用意しシミュレーション機能などで、設計や試運転の工数やコストの大幅削減を実現する。従来の類似製品と比較し、搬送パフォーマンスで最大50%向上、設計工数で約30%削減、実装および試運転時間の50%削減に成功したとしている。
リニア搬送システムには既に多くの競合企業が参入し提案を強化しているが、シュナイダーエレクトリックの強みとして角田氏は「後発の強みを生かし、先行メーカーの弱みを解消した点が1つある。例えば、コーナーでの減速や熱の問題をメカ的に解決する機構を入れている。また、他の機器との一括制御やシミュレーションなども強みになると捉えている」と述べている。
ソフトウェア中心の新たな制御ソリューションを展開
さらに、先を見据えた新たな提案としてソフトウェアプログラムを中心とした新たな制御思想を実現するため、ソフトウェアコントローラー「EcoStruxure Automation Expert」を2022年第3四半期(7〜9月)に投入する。
「EcoStruxure Automation Expert」は、ハードウェアに依存した制御設計からの脱却を目指し、オブジェクト指向によるプログラムの再利用化で、ソフトウェア中心の制御システムを実現する新たな仕組みだ。従来の制御システムはハードウェアに対し、それを制御する固有の制御プログラムが必要で、制御機器が増えれば増えるほど、専用の制御プログラムを用意する必要があった。この仕組みを打破し、1つの制御プログラムを中心と位置付け、複数のハードウェアがこのソフトウェアを基に動くような仕組みに変えることを目指している。
まずは、機能ごとの動作プログラムを事前にモジュールとして作る「ファンクションブロック」を用意し、これらの組み合わせにより作業動作を規定する。さらに、実際に稼働する各ハードウェアとの間には実際のこれらのプログラムを稼働させるインタフェースを用意し、これらを全てソフトウェアの組み合わせで実現することで、ソフトウェア中心の仕組みとしていく。
IEC 61499に準拠したイベントドリブン型のオブジェクト指向分散アーキテクチャを採用し、制御プログラム、HMI部品、関連ドキュメントなどをCAT(Composite Automation Type)オブジェクトとして一体化することで、プログラムの開発工数削減にも貢献する。モーターやバルブなど実際の使用機器をベースにしたCATオブジェクトを数多く用意する他、コンベヤーやターンテーブルなど、アプリケーションベースのCATのライブラリも順次拡大する。
角田氏は「グローバルでは既に投入を行っているが、用途に応じたファンクションブロックの整備が必要で日本でのニーズを見極めて取り組みを進めていく。マテリアルハンドリングやコンシューマー製品向けでのニーズがあると見ている」と今後の展開について語っている。
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