日本人は他人の不幸を「本人の日頃の行い」に理由があると考えやすい:医療技術ニュース
大阪大学は、日米での「不幸に見舞われることへの考え方」について比較検証し、日本人と米国人では考え方の傾向が異なることを示した。特に日本人は、因果性のない突然の不幸が日頃の行いの悪さによるものと推論しやすい文化特殊性があった。
大阪大学は2021年10月25日、日米での「不幸に見舞われることへの考え方」について比較検証し、日本人は他人が不幸に見舞われたときに「日頃の行いが悪いからだ」と考える傾向があり、米国人は「不幸もいつか人生の糧になる」と考えやすいという結果を発表した。近畿大学、北海学園大学との共同研究による成果だ。
他人が不幸に見舞われたときに、「日頃の行いが悪い」とその人に理由を求める傾向を内在的公正推論という。一方、現在の不幸は将来の充実した人生によって埋め合わせできると期待することで、自らの不安を抑えようとする傾向を究極的公正推論と呼ぶ。
今回の検証では、日本人88人、米国人81人に対するアンケート調査を実施。「突然倒れた街路樹で運転手が下敷きになり、重傷を負った」という架空の記事を提示し、その運転手が「窃盗の罪で在宅起訴中の高校教師」「周囲から人望が厚い高校教師」といういずれかの情報を与えた。
その結果、日米のどちらの参加者も、道徳的価値が低い在宅起訴中の高校教師には内在的公正推論が行われやすい傾向が見られた。その中でも日本人は特に、因果性のない突然の不幸が日頃の行いの悪さによるものと推論しやすい文化特殊性があった。
また、不幸に遭った人の道徳的価値に関係なく、日本人は不幸が将来的に人生の糧になると考えにくいことも示された。日本人は特定の信仰を持たない人が多く、将来の出来事を想像して今の不安を解消するという方法になじみがないことが理由と考えられる。現在の不安をコントロールする手段がないため、日本人は内在的公正推論が強い可能性が示唆された。
内在的公正推論が強いと、道徳的価値が低い人の偶発的な不幸を本人のせいと捉えがちになる可能性ある。新型コロナウイルス感染症に罹患した人に対して、無関係な人が自業自得だと考えることは、その例に当たる。
今回の検証で得られた知見は、西洋の(western)教育を受けた(educated)、工業化され(industrialized)、豊かで(rich)、民主的な(democratic)人たちを対象に実施された研究結果を人間一般と捉えるWEIRD問題や、研究結果の再現性問題において重要な意味を持つとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- チームが「ゾーン」に入った時の脳活動を解明
豊橋技術科学大学は、複数の人間が協調して「ゾーン」に入った状態を指す「チームフロー」に関係する脳波と脳領域を発見した。チームフローの状態では、特に左中側頭葉が特異的に活性化していた。 - 人間の脳のように振る舞う汎用人工知能を開発するための方法論を標準化
東京大学は、汎用AIなどのソフトウェアを実装する際の仕様情報となる脳参照アーキテクチャデータ形式と、それを用いた開発方法論を標準化した。 - レム睡眠中に脳がリフレッシュされる仕組みを解明
京都大学は、脳内の微小環境を直接観察する技術を開発し、睡眠中の脳がリフレッシュされている仕組み解明した。レム睡眠中に大脳皮質の毛細血管へ流入する赤血球数が増加しており、活発に物質交換をしていることが示唆された。 - 香りの種類でスピード感が変わるクロスモーダル現象を発見
情報通信研究機構は、心理物理実験とfMRI実験により、香りで映像のスピード感が変わる新しいクロスモーダル現象を発見した。香りが低次の脳機能に影響を与えることを発見したのは世界で初になるという。 - パブロフの条件反射の仕組みを解明
情報通信研究機構は、「パブロフの条件反射」の脳内での仕組みを解明した。条件刺激と無条件刺激を同時に与えることを繰り返すことで、摂食行動を司令するニューロンに新しいつながりができて、ニューロンの活動を操れるようになる。 - 光照射により、任意の領域で脳内血流を変化させる技術を開発
慶應義塾大学は、光照射によって脳内の任意の領域で血流を自由に増減できる技術を開発した。麻酔なしで自由に動き回るマウスの脳血流を操作し、神経活動と行動にどのような影響を与えるかを確認した。