人間の脳のように振る舞う汎用人工知能を開発するための方法論を標準化:医療技術ニュース
東京大学は、汎用AIなどのソフトウェアを実装する際の仕様情報となる脳参照アーキテクチャデータ形式と、それを用いた開発方法論を標準化した。
東京大学は2021年9月28日、汎用AI(人工知能)などのソフトウェアを実装する際の仕様情報となる脳参照アーキテクチャ(BRA)データ形式と、それを用いた開発方法論を標準化したと発表した。
今回提案されたのは、人間の認知機能を脳全体の神経回路を参照しながら再現する脳型ソフトウェア開発を、BRAを共同で描く設計作業と、BRAに基づきソフトウェアの実装と統合を行う開発作業を分けることによるBRA駆動開発方法論だ。
BRAは脳型ソフトウェアの外部設計仕様書で、メゾスコピックレベルの解剖学的構造を記述した脳情報フロー(Brain Information Flow: BIF)と、ある神経回路の解剖学的構造と一致するように機能を整理した仮説的コンポーネント図(HCD)が、主な構成要素となる。全てのソフトウェア開発プロジェクトは、基本的に特定のHCDに基づいている。
BIFデータは、神経科学の論文やデータを収集、整理して作成され、解剖学的構造における情報の流れが記述されている。脳内におけるさまざまな粒度の「サーキット」をノードとし、それらの間の軸索投射にあたる「コネクション」をリンクとする有向グラフだ。BIFに割り当てられる計算機能は仮設のためHCDと呼ばれ、どのサーキットに対しても複数のHCDが使用できる。
HCDを仕様として参照することで、脳を深く理解していない開発者でも脳型ソフトウェア開発の実装に携われるようになり、作成されたソフトウェアの生物学的妥当性は、その構造と動作がBRAと一致しているかによって評価される。今回提案された方法論に賛同する協力者が増えれば、BRA形式のデータの蓄積と共有が進み、脳の計算論的理解や認知モデルの開発などへの応用につながることが期待できる。
2014年から「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用AIを創る(工学)」ことで設計空間を制約する全脳アーキテクチャアプローチが、全脳アーキテクチャ・イニシアティブが主体となり推進されている。
その取り組みの中で、脳科学とソフトウェア開発の両方に精通した人材が少なく、育成も困難であるという課題が判明。また、膨大な神経科学知見を必要とする脳全体の機能を統合したソフトウェアを個人の認知力に頼って開発することは無理があること、脳の認知機能をソフトウェアに反映させるためには参照する脳の記述粒度を適切に選択する必要がある、という課題が明らかになっていた。
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