チームが「ゾーン」に入った時の脳活動を解明:医療技術ニュース
豊橋技術科学大学は、複数の人間が協調して「ゾーン」に入った状態を指す「チームフロー」に関係する脳波と脳領域を発見した。チームフローの状態では、特に左中側頭葉が特異的に活性化していた。
豊橋技術科学大学は2021年10月6日、複数の人間が協調して「ゾーン」に入った状態を指す「チームフロー」に関係する脳波と脳領域を発見したと発表した。東北大学、カリフォルニア工科大学との共同研究による成果だ。
チームフローとは、メンバーが協調してゾーンに入り、タスクを共に達成する時に経験する心理現象だ。通常の限界を超えて、調和の取れた高いパフォーマンスを発揮することがある。今回の研究では、個人がゾーンに入った状態のソロフローや通常のチームワークと比較することで、チームフロー状態を科学的に調べた。
実験では、2人1組で音楽ビデオゲームをプレイすることでチームフローを再現し、プレイ中の脳波を測定した。また、互いの顔が見えない状態でプレイすることによるソロフロー状態や、音楽をランダムな音列にし、チームワークは保てるもののチームフローになれない状態で脳波を測定した。フロー状態のレベルは、ゲームプレイ後に参加者に質問した回答で評価した。
ソロフロー、チームワーク、チームフローの各状態の脳波解析を比較したところ、チームフローの状態では、中側頭皮質でベータ波とガンマ波が増加していた。特に、左中側頭葉が特異的に活性化しており、左中側頭皮質がソロフローと社会的コミュニケーションに関連する脳領域から情報を受け取り、統合していると考えられる。
また、チームフロー状態では、通常のチームワーク状態と比べてチームメイトの脳活動がより強く同期していた。このことから、左中側頭皮質が脳間神経の高い同期に関係していることも分かった。
チームフロー時の心理状態を科学的に調べるためには、チームフロー状態を再現して客観的に測定することが必要だ。今回の研究成果は、チームのパフォーマンスのモニタリングや予測、さらには効果的なチーム構築に向けた活用が期待される。
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