新型コロナウイルスを防御する、スパイクタンパク質の改変形式を開発:医療技術ニュース
大阪大学は、新型コロナウイルスのタンパク質を改変して免疫することで、SARS-CoV-2や他のSARS類縁ウイルスにも有効なワクチンとして働くことを見出した。将来、発生の可能性がある、SARS類縁ウイルスに有効なワクチン開発が期待される。
大阪大学は2021年10月8日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のタンパク質を改変して免疫することで、SARS-CoV-2や他のSARS類縁ウイルスにも有効なワクチンとして働くことを発表した。将来、発生の可能性がある、新型コロナSARS類縁ウイルスに有効なワクチン開発につながることが期待される。
→特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
SARS類縁ウイルスには、ウイルス間で構造的に保存されているタンパク領域がある。このコアー領域に対して抗体を優位に作るため、ウイルスのスパイクタンパク質レセプター結合領域(RDB)を改変した。
この改変形式では、まず、各ウイルスで構造が異なるヘッド領域に、狙ったアミノ酸に対して糖鎖を付加するグリカンエンジニアリングを実施。このヘッド領域に対して、抗体が作られないようにした。
この改変RDBを用いてマウスに免疫したところ、構造的に保存されているコアー領域に対して、同領域を認識する抗体が優位に誘導された。抗体は、SARS-CoV-2だけでなく、SARS-CoV、WIV1-CoVなど他のSARS類縁ウイルスにも防御効果を持つワクチンとして働くことが分かった。
現在のSARS-CoV-2に対するワクチンは、変異がなければ十分な効果を発揮するが、新型のSARS類縁ウイルスが登場すると、爆発的な感染が生じる懸念がある。そのため、SARS類縁ウイルスに幅広く効果を示すワクチンが求められている。
関連記事
- ≫特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
- 空気中の新型コロナウイルスを高速で検知するセンサーの共同開発が進行中
ボールウェーブ、東北大学、豊田合成は、空気中の新型コロナウイルスを直接検出する高速のウイルスセンサー開発を目的とした「ボールSAWウイルスセンサーの原理検証に関する研究」を共同で進めている。 - 陰性証明書発行まで最短3時間、関西国際空港内にPCR検査センターを設置
近畿大学と川崎重工業は、関西国際空港内にPCR検査センターを設置した。自動PCR検査ロボットを用いて、国際線で出国する旅客向けに検査サービスを提供する。検査受付から最短3時間で陰性証明書の発行が可能だ。 - AGC、COVID-19ワクチン用途で注目されるmRNA原料の生産設備を新設
AGC Biologicsは、同社のハイデルベルグ工場に、mRNAの原料となるpDNAの生産ラインを増設する。新型コロナワクチン用途をはじめ、他の領域でも需要拡大が見込まれるmRNAの製造能力を増強し、mRNA製造受託サービスを展開する。 - 新型コロナの感染予測を毎日更新、天気予報の手法を応用
名古屋大学は、天気予報で用いるデータ同化手法を応用して、毎日取得する最新データを生かした新型コロナウイルス感染症の感染予測を開始した。理化学研究所データ同化研究チームのサイトで、4つの予測シナリオに基づく感染予測を公開している。 - 1滴の血液から新型コロナウイルス抗体の種類と量を測定できるシステム
理化学研究所は、新型コロナウイルスに対する抗体の種類と量を1滴の血液から30分で測定できる「ウイルス・マイクロアレイ検出システム」を開発した。簡易検査の免疫クロマトグラフィーに比べ、約500倍の感度を持つ。 - マイクロスケール3DプリンタでCOVID-19検査用の高精細モデルを作製
カリフォルニア大学バークレー校が、BMFのマイクロスケール3Dプリンティングシステムを用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査用のモデルを作製した。3Dプリンタ「microArch S140」によって50μmのチャンネル造形に成功し、同一モデルに8本のチャンネルを収めることができた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.