新型コロナの感染予測を毎日更新、天気予報の手法を応用:医療技術ニュース
名古屋大学は、天気予報で用いるデータ同化手法を応用して、毎日取得する最新データを生かした新型コロナウイルス感染症の感染予測を開始した。理化学研究所データ同化研究チームのサイトで、4つの予測シナリオに基づく感染予測を公開している。
名古屋大学は2021年9月14日、天気予報で用いるデータ同化手法を応用して、毎日取得する最新データを生かした、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予測を開始したと発表した。理化学研究所との共同研究による成果となる。
2021年9月12日までの全国データを用いて予測される、入院治療などを要する人数の今後の予測(信頼区間68%)。緑、青、赤はそれぞれ1回目、2回目、3回目の緊急事態宣言期間の抑制効果シナリオを適用した場合に対応(クリックで拡大) 出典:名古屋大学
→特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
予測のために使用する毎日の実測値は、入院治療などを要する人数、退院または療養解除となった人数、死亡者数の3種類。数理モデルは、感染症予測に用いられるSIRモデルをCOVID-19の特徴に合わせ、新たに拡張SIRモデルを構築した。これらに、天気予報で使用するアンサンブルカルマンフィルタというデータ同化手法を適用し、推定誤差を含めた幅を持った推定を実施した。
このデータ同化により、1人の感染者が何人に感染させたかを示す実効再生産数を推定した。全国データを使った結果では、過去3回、東京都に出された緊急事態宣言に対応して、実効再生産数が減り、感染抑制効果が確認できた。また、緊急事態宣言の回数が増えるにつれて、効果が小さくなることも明らかとなった。
次に、過去3回の緊急事態宣言期間中の抑制効果に対応した3種類の将来予測シナリオと、抑制効果がない場合の予測シナリオについて、今後の感染推移を予測した。
さらに、この4つの予測シナリオに基づいて、拡張SIRモデルにより入院治療などを必要とする人数の推移も予測した。
これまでの推定、将来予測データは、理化学研究所データ同化研究チームのCOVID-19感染予測サイトで公開している。研究チームは今後、拡張SIRモデルでは考慮されていないワクチン接種の効果や、地域間の人の往来効果、人流、気温などの要因を取り入れた数理モデルと実測データを結び付けるデータ同化により、状況に応じた効果的な感染抑制策の提案など、新型コロナウイルス感染症対策に役立てたいとしている。
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