5Gスマホのミリ波対応を加速、村田製作所がL字型RFアンテナモジュールを開発:CEATEC 2021
村田製作所は、5Gのミリ波周波数帯域に対応した2方向への電波放射が可能な小型フェーズドアレイアンテナモジュール「LBKAシリーズ」を発表した。既に量産を開始しており、2021年内に発売予定のスマートフォンに搭載される予定である。
村田製作所は2021年10月13日、5Gのミリ波周波数帯域に対応した、2方向への電波放射が可能な小型フェーズドアレイアンテナモジュール「LBKAシリーズ」を発表した。既に量産を開始しており、2021年内に発売予定のスマートフォンに搭載される予定である。
2020年3月から大手通信キャリアによる5G通信サービスがスタートし、市販されるスマートフォンの多くが5G対応となっている。ただし、5Gの最大の特徴である「高速大容量」などの特徴を最大限に享受するには、5Gで新たに加わった通信帯域であるミリ波を利用する必要がある。
ミリ波は周波数が高いため空間での伝搬損失が大きく通信距離が短くなるという課題がある。この課題を解決するため、通信距離を延ばすためにアンテナ素子を増やすアレイアンテナ構造の採用や、アレイアンテナ構造によって狭まるカバレッジ(通信可能な角度範囲)に対応するためのビームフォーミングが提案されているものの、スマートフォンに実用的に組み込むことが難しく、ミリ波対応の5Gスマートフォンが広く市場投入されているという状況ではない。
LBKAシリーズは、村田製作所独自の樹脂多層基板「メトロサーク」をL字型に形成し、角度が90度異なる方向を向く2面の基板にそれぞれアレイアンテナを配置することにより、1個のRFICで2方向への電波放射が可能だ。例えば、スマートフォン上側の側面部などに組み込めば、5Gミリ波通信の送受信をより安定して行えるようになる。また、メトロサークが優れた高周波特性を持つことから、アンテナの高性能化と高いゲイン性能も実現できるという。
これまでの一般的なミリ波対応5Gスマートフォンでは、カバレッジを広く取るために複数のRFモジュールを組み込むことが多かった。この場合、ベースバンドモジュールと各RFモジュールにRFICを組み込まなければならず、RFモジュールとベースバンドモジュールをつなぐケーブルやコネクターもその分だけ多く必要になる。LBKAシリーズを使えば、複数のRFモジュールを組み込むためのコスト、ケーブルやコネクターの設置スペースを削減でき、ミリ波対応5Gスマートフォンの小型化にも寄与できるという。
LBKAシリーズの仕様は以下の通り。外形寸法は幅22.5×奥行き5.69×高さ4.75mm。アンテナは1×4構成のアレイアンテナを2組、L字形状の各面に搭載している。対応周波数帯は、n261/n258/n257(24.25G〜29.5GHz)、n260(37G〜40GHz)となっている。
なお、LBKAシリーズは「CEATEC 2021 ONLINE」(2021年10月19〜22日、オンライン開催)で展示される予定だ。
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