パナソニックが市販カーナビの新製品、「市販ならではの先進性」は模索続く:車載情報機器
パナソニックは2021年10月14日、市販向けカーナビゲーションシステム「Strada(ストラーダ)」のスタンダードモデル4機種と大画面モデル3機種の新製品を発表した。
パナソニックは2021年10月14日、市販向けカーナビゲーションシステム「Strada(ストラーダ)」のスタンダードモデル4機種と大画面モデル3機種の新製品を発表した。いずれも同年12月中旬に発売する。スタンダードモデルは、地図や動画の高画質化へのニーズを受けて、HD表示に対応した。大画面モデルは有機ELパネルとHD液晶の2種類を用意。CPUの処理性能向上によって、ルート探索に要する処理時間を半分以下に短縮するとともに、タッチ入力に対する応答性を向上させた。
想定販売価格は、大画面モデルが14万〜22万円、スタンダードモデルが8万〜9万円としている。月間生産台数は大画面モデル3機種合計で5500台、スタンダードモデルが4機種合計で2万台としている。
半導体不足の影響を抑えて新製品の安定供給狙う
国内向けのカーナビ需要は、楽観できない状況が続いている。2020年度はコロナ禍で新車販売が低水準となり、カーナビも需要と供給の両面で影響を受けた。2021年度は車両販売の回復でカーナビ市場も復調の兆しだったが、7月以降は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響だけでなく、半導体不足の影響を受けている。2021年度通期としては2019年並みに販売が回復する見込みだが、価格帯別にみると、低価格化が進む想定だ。
半導体不足は市販カーナビでも大きな課題となっており、パナソニックは仕入先である各地のサプライヤーと協力し、いち早く情報を得ながら安定して製品を供給したい考えだ。特に、今回発表した新商品は供給が滞らないよう、部材を確保していくとしている。
コロナ禍での公共交通機関から自家用車へのシフトや、さまざまな消費が自粛から少しずつ回復することにも期待を寄せている。市場調査では、ワクチン接種後に、国内旅行をはじめとするレジャー消費を希望する声が多いという。
市販とディーラーオプション、純正との差別化は今後も課題に
国内のカーナビ市場では、8型以上の大画面モデルのシェアが直近で37%から46%に比率が高まったという。パナソニックの10型の製品では、ユーザーの車種は軽自動車からSUV、ミニバンまで幅広い。新車購入時の装着が56%を占めるが、中古車や既販車での装着も44%と増えてきた。自動車メーカーが純正カーナビを積極的に搭載しているため、中古車や既販車での市販カーナビのニーズを積極的に取り込んでいく。
市販カーナビは、スマートフォンのナビゲーションアプリとの差別化が課題となる。かつて市場を席巻したPND(Portable Navigation Device)は既に、カーナビ代わりにスマートフォンを使うユーザーの拡大の影響を受けており、市場としては衰退期だという。今回発表した新製品のようなAV一体機はスマートフォンにない強みを出せるとみて機能性で差別化を図っていく。また、新製品では自車位置の精度が向上しており、立体駐車場内や、上下道での判定が正確になった。こうした性能面でもスマートフォンのナビアプリとの差別化を図るとしている。
ディーラーオプションのカーナビの装着率が上がっていることも、市販カーナビにとっては向かい風だ。運転支援システムの情報や駐車支援のカメラ映像の表示など、ディーラーオプションや純正のカーナビでなければ対応できない機能が増えている。また、これまでは市販カーナビがディーラーオプションや純正のカーナビよりも機能的に先行しているというのが強みだったが、最近はその差が小さくなっているという。
市販カーナビ市場は成長期ではなく、横ばいもしくは台数ベースでは縮小していく局面にある。ディーラーオプションや純正のカーナビにはない先を行く機能や、スマートフォンでは提供できない価値を追求することが今後の課題となる。
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