高機能化で熱くなるインフォテインメントシステム、温度をどう監視すべきか:車載情報機器(1/2 ページ)
クルマのダッシュボード上に増え続ける電子コンテンツは、直感的で楽しい体験を乗る人に提供する一方で、より多く、エネルギーを消費し、熱を発します。
現在の自動車には、これまで以上に複雑なインフォテインメントシステムやクラスタシステムが搭載され、ヘッドユニットや統合型コックピットで驚くほど豊富な機能を提供しています。例えば、ナビゲーション、車両診断情報、ワイヤレスおよびBluetoothによるスマートフォンの接続、音楽の再生、ビデオエンターテインメントなどです。クルマのダッシュボード上に増え続ける電子コンテンツは、直感的で楽しい体験を乗る人に提供する一方で、より多く、エネルギーを消費し、熱を発します。
インフォテインメントシステムやクラスタシステムによる発熱量が増加していることで、自動車メーカーは新たな熱管理の課題に対処する必要に迫られています。顧客をひきつけるために豊富な機能と快適な運転体験を提供しながら、これらのシステムの重要な機能を安全かつ高い信頼性で確実に動作させることを、限られた予算内で全て実現する必要があります。
ただ、一般的なインフォテインメントシステムに見られる、CPUやGPU、ASIC、FPGAなどの高性能プロセッサの温度を監視することは通常、複雑な処理です。さまざまなインフォテインメントやクラスタのアプリケーションには、それぞれに熱に関する問題があります。
これに対し、熱監視を使えばこのようなシステムがシステムシャットダウンを安全に開始できるだけでなく、温度を利用して動的に性能を調節できるようになります。高性能プロセッサに対する効率的な温度監視のためには、温度精度と車両内のセンサー配置という2つの設計上の考慮事項があります。
車載ヘッドユニットの高負荷マイクロプロセッサを熱から保護する
車載ヘッドユニットは、インフォテインメントシステムのメインコントロールパネルとなっており、各種のボタンを備え、これまではクルマのあちこちに散在していた多種多様な機能を集約しています。このような集約化により、ヘッドユニットは、アプリケーションプロセッサによる重要な処理パワーを備えたインフォテインメントの頭脳となります。しかし、アプリケーションプロセッサは、処理負荷が増すとすぐに高熱になる傾向があります。
熱の発生と高温リスクのほとんどは、これらのマイクロプロセッサのコアから来ています。最も信頼性のある測定温度を得るには、プロセッサ基板に実装したサーマルダイオードやプロセッサのダイ内のダイオードによりP-N接合を介してリモートで感知するのが一般的です。
このリモートセンシングのためにTIが設計したリモート温度センサー「TMP451-Q1」では、動作時周囲温度が-40〜+125℃、標準精度が±1℃となっており、リモートチャネル(プロセッサコア)またはローカル(温度センサの設置場所)のいずれかに対応し、2つの温度測定値をシステムに伝えます。電力消費量と、その結果として測定精度に影響する自己発熱を抑えるために、TMP451-Q1は1.7〜3.6Vの低電圧電源で動作し、動作時消費電流が27µAと低い一方、毎秒0.0625回の速度で変換を行います。
TMP451-Q1は、8ピンで2mm×2mmと超小型で薄型のSON(Small Outline No-lead)パッケージなので、スペースに制約のあるヘッドユニットのPCB基板に非常に適しています。2.5×2.5mmのウェッタブルフランクパッケージ(リードレスパッケージの実装基板へのハンダ付け状態を目視確認できるようにはんだ付けパッドに加工を施したパッケージ方式)もあり、電子機器基板のハンダ付け確認を迅速に行うために自動車工場で採用されている自動光学検査(AOI)プロセスに適合します。
このデバイスには、温度が規定の閾値を超えるとシステムに割り込んで動作を調整するアラート機能があります。THERMとALERT/THERM2の2つのアラート機能があり、より高精度にシステムの熱管理を行えます。
図2に示すように、警告として85℃に設定された1つ目の割り込み(THERM2)は、ファンや冷却システムを起動したり、マイクロプロセッサの性能を落とすことで、過熱のリスクを抑えます。110℃に設定された2つ目の割り込み(THERM)では、システムを実際にシャットダウンして、ダメージを受けないように保護します。例えば、シャットダウンしてシステムリセットを開始し、THERMヒステリシスのレベルより温度が下がるまで待機するよう指示することができます。
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