ハーマンが自動車向けで3兆円の受注獲得、サムスングループの強みをフル活用で:車載情報機器
サムスン傘下に入って3年のハーマンインターナショナルが、2025年に売上高200億ドル(約2兆1524億円)を達成するという目標に向けて動き出している。ハーマンインターナショナルは民生向けと自動車向けの両方でビジネスを展開しており、どちらも成長のけん引役と位置付けているが、売り上げの比率が大きいのは自動車向けだ。
サムスン傘下に入って3年のハーマンインターナショナルが、2025年に売上高200億ドル(約2兆1524億円)を達成するという目標に向けて動き出している。ハーマンインターナショナルは民生向けと自動車向けの両方でビジネスを展開しており、どちらも成長のけん引役と位置付けているが、売り上げの比率が大きいのは自動車向けだ。
2019年の売上高は前年比10%増の88億ドル(約9470億円)で、過去最高を達成した。このうち50億ドル(約5381億円)が自動車向けのブランドオーディオやインフォテインメントシステムだ。自動車関連の事業では、290億ドル(約3兆1209億円)に上る今後数年分の受注が確定している。
受注残のうち190億ドル(約2兆447億円)がコネクテッドカー関連、90億ドル(約9685億円)がオーディオ、10億ドル(約1076億円)がコネクテッドサービスだという。社内には無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)や車載セキュリティを手掛ける部門もあり、インフォテインメントシステムの部門と連携しながら製品開発を進める。
日本では、トヨタ自動車やスバル向けの対応を強化している。スバルの中核開発拠点がある群馬県太田市では、オフィスや開発拠点を拡充。トヨタ自動車が開発拠点を置く愛知県名古屋市でも、試聴室の更新やエンジニアリングチームの増強を図った。スバルの北米向けモデルで採用しているオーディオやナビゲーションシステムがハーマンインターナショナル製で、市場から高い評価を得ているという。
グーグル、アップル、アマゾンとも連携、コンシューマーの需要をクルマに
サムスンとの連携も強みとなる。買収によってグループの一員となったことで、サムスンが持つ事業規模や研究開発力を活用できるようになり、5Gを使ったテレマティクスサービス、車載用のディスプレイやアンテナの開発が進んでいる。
ハーマンインターナショナルとサムスンが開発した5G対応テレマティクスサービスは、2021年からドイツ自動車メーカーの量産モデルに採用される予定だ。この5G対応テレマティクスサービスは、特定の地域に限らずグローバルで展開されるという。
ルーフに統合可能な平面アンテナの開発も進めている。現在、自動車には十数種類のアンテナが分散して搭載されているが、開発中の車載アンテナはこれらを1つにまとめる。サムスンの影響が特に大きい製品だとしている。さらに、サムスンが手掛ける家電やスマートホームのソリューションなどコンシューマー向けの製品とクルマを連携させることで、シームレスにつながる社会の実現を目指す。
この他にも、V2X(車車間、路車間、歩車間通信)や、移動中の時間を有効活用するための車載アプリ、コネクティビティのないクルマ向けに後付けできる通信デバイス、電気自動車向けの軽量・省電力のオーディオシステム、カーシェアリング車両向けのパーソナライズシステム、ノイズキャンセリング技術などを提案し、自動車向けの売り上げを伸ばす。ブランドオーディオの装着率向上にも取り組んでいる。
サムスンだけでなく、グーグルやアップル、マイクロソフト、セールスフォース、NTTドコモ、テンセントといったグローバルパートナーとも協力している。日本向けの製品では、音声認識でグーグルと、車内コミュニケーション向けのマイクの技術などでNTTドコモと連携している。
さらに、業界の垣根を超えて“クルマの中の体験”を再定義するための団体「The Experiences Per Mile Advisory Council」の参加企業との協業もスタートさせた。同団体には、ハーマンとサムスンの他、アマゾン(Amazon.com)、Spotify、SAP、シスコシステムズ、自動車メーカー7社が参加している。コンシューマーの要求への理解を深め、インフォテインメントシステムや自動車向けのソリューションにいち早く反映させることを目指している。
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