非接触のセンサーと機械学習の組み合わせで頸髄症患者をスクリーニング:医療技術ニュース
東京医科歯科大学と慶應義塾大学は、非接触型センサーを用いて手指動作のデータを取得し、機械学習によって疾患の有無を推定する、頸髄症を簡便にスクリーニングする手法を開発した。
東京医科歯科大学、慶應義塾大学は2021年9月27日、頸髄症を簡便にスクリーニングする手法を開発したと発表した。非接触型センサーを用いて手指動作のデータを取得し、機械学習によって疾患の有無を推定する。専門医による既存の身体診察と同等以上の高い精度で、頸髄症の可能性を検査できる。
手指動作のデータ取得には、非接触でリアルタイムに動作を計測する、Ultraleapのセンサー「Leap Motion」を利用する。被験者は、PCに接続したLeap Motionの前に座り、腕を伸ばした状態で素早く手指を20回開閉する。開閉動作はリアルタイムでPCのディスプレイに表示され、記録が保存される。
頸髄症患者50人、頸髄症ではない被験者28人からLeap Motionで得られたデータを機械学習に用いたところ、疾患のある人を陽性と判定する感度、疾患のない人を陰性と判定する特異度、検査精度の質を示すAUCは、それぞれ84%、60.7%、0.85だった。これらの値は全て、従来の専門医による検査と同等かそれ以上だった。
頸髄症は頚椎の中で脊髄が圧迫されて起こる疾患で、手指の動かしにくさや歩行のふらつきを引き起こす。初期症状に乏しく専門医以外の診断が難しいため、診断がつくまでに進行が進んでしまうことがあるという課題がある。
今後、本手法が社会実装されれば、この検査で頚髄症が疑われた場合に、専門医による早期診断、早期治療につなげるシステムを作れる。最終的には、疾患の重症化による身体機能の低下、社会的損失を防ぐことを目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 細胞内電位記録と同等の信号強度が得られる有機トランジスタセンサーを開発
東京大学、東京女子医科大学、早稲田大学は、共同開発した有機トランジスタのセンサーマトリクスにより、細胞内電位記録と同等の信号強度の心筋細胞電位を細胞外から多点で同時計測することに成功した。 - 微量の匂い分子を検出する、蚊の嗅覚受容体を利用した匂いセンサーを開発
東京大学と神奈川県立産業技術総合研究所は、蚊の触覚に存在する嗅覚受容体を人工の細胞膜上に組み込んだ匂いセンサーを開発し、呼気に混合した微量の腫瘍マーカーを嗅ぎ分けることに成功した。 - 日常の生活環境下で心臓磁場を簡単に検出するセンサーを技術
東北大学とスピンセンシングファクトリーは、新型磁気センサー素子と外部環境磁場ノイズのキャンセル技術を開発し、日常的な生活環境においてヒトの心臓の動きから発生する微弱な磁気信号を検出することに成功した。 - ビタミン代謝物を簡単に定量できる超分子バイオセンサーを開発
金沢大学と京都大学は、生体試料中のビタミン代謝物を迅速かつ簡便に定量できる超分子バイオセンサー「P6A」を開発した。検体とP6Aを混合して蛍光測定するだけで、熟練スキルと多大な時間が必要だった従来法と同等の結果を得られる。 - 皮膚感覚に影響を与えない極薄スキン圧力センサーを開発
東京大学は、皮膚に直接貼り付けても皮膚感覚に影響を与えない、極薄のスキン圧力センサーを開発した。溶解した材料から紡糸する電界紡糸法を用いて、4つのナノメッシュ層を重ね合わせて作製している。 - 「おいしい」塩味を感じる分子メカニズムを解明
京都府立医科大学は、マウスを用いた実験で、舌の味蕾と呼ばれる味覚センサー器官の中の塩味を感じる細胞を同定し、さらにこの塩味受容細胞で塩味の情報が変換され、脳へと伝えられる仕組みについて分子レベルで解明した。