モデルベース開発の普及活動が官から民に、43社参加のMBD推進センターが発足:モデルベース開発(2/2 ページ)
自動車メーカーとサプライヤーが運営する「MBD推進センター(Japan Automotive Model-Based Engineering center、JAMBE)」が2021年9月24日に発足した。参画企業と日本自動車研究所(JARI)の共同研究事業として、モデルベース開発(MBD)を中小サプライヤーや大学にも普及させていく。
MBD推進センターへの期待
ステアリングコミッティ委員長を務めるマツダの人見氏は、MBDの普及によって目指す姿について「研究や開発の段階から、自動車メーカーとサプライヤー、エンジニアリング会社、大学などが1つの会社の研究開発部門のようにつながる」と説明した。これによって開発効率を向上する。また、「自動車業界でリソースが十分にあるといえる会社はないだろう。技術の移行期はやることが多い。今やっていることを効率化すれば、将来の競争力につながる」と不可欠な取り組みであることをアピールした。
さらに、モデルをやりとりする共通のルールを各社が採用することで、モデルによるさまざまな検討が容易になるという。複数の自動車メーカーと取引のあるサプライヤーにとってメリットが大きいという。
また、MBD推進センターで目指す在り方を料理に例え、「おいしいレシピ(=モデル)がたくさんそろっており、継続的に増える。調味料(=技術や部品)を売り込みたい企業は、標準レシピに自社の調味料を加えるとどのようにおいしくなるかを提案すれば、標準レシピを知る多くの店(=MBD推進センターのメンバー)に売り込むことができる」(人見氏)と説明した。“人気店のおいしさの秘密”を知りたい声が多ければ、おいしさの秘密を分析するためにMBD推進センターでコンソーシアムを組み、他銘柄評価も行う。
MBD推進センター ステアリングコミッティ委員のパナソニック 水山正重氏は「コンピュータや携帯電話機の例を見ても、ユーザーの期待に応えるために製品が発展していく中でオープンなエコシステムでの技術革新の実現は必須」と指摘する。
製品開発には内製主体、部品調達、オープンなエコシステムの3段階があり、プログラムの規模が大きくなるにつれて次の段階に移行する。現在の自動車は、コンピュータや携帯電話機がオープンなエコシステムによる開発に移行した時点よりもプログラムの規模が大きくなっているという。「MBD推進センターは、自動車業界でオープンなエコシステムでの開発を実現する起爆剤になる」(水山氏)。
日本の自動車業界とMBD
経産省主導のMBD普及に向けた取り組みは2015年にスタートした。「自動車産業におけるモデル利用の在り方に関する研究会(MBD研究会)」を立ち上げ、モデルが組織を超えて流通するためのインタフェースについてガイドラインを策定。ガイドラインに準拠したモデルも作成した。日本の製造業が強みとしてきた「すりあわせ」を深化させる手段としてMBDを用い、サプライチェーン全体に普及させて競争力を高めることが狙いだ。この構想は「SURIAWASE2.0」として発表した。
2018年からはインタフェースのガイドラインや準拠したモデルを拡充する「次世代自動車等の開発加速化に係るシミュレーション基盤構築事業(シミュレーション基盤構築事業)」が始まった。当初はモデル流通の対象を燃費性能としていたが、熱性能、運動性能、振動、EV(電気自動車)の電費、HEVの燃費、CVTの燃費性能などに領域を広げた。
エンジンや駆動システムのモデルを詳細化するにあたっては、「自動車用動力伝達技術研究組合(Transmission Research Association for Mobility Innovation、TRAMI)」や「自動車用内燃機関技術研究組合(Research Association of Automobile Internal Combustion Engines、AICE)」とも連携している。
同じく2018年から、MBD研究会は、自立してMBD推進に取り組むための活動として、プラントモデルと制御モデルのインタフェースや、MBDを適用する領域について検討してきた。また、人材育成や、海外のモデル流通の動向との連携にも取り組んだ。MBD推進センターは、こうしたオールジャパンの活動を取り込み、拡大する形で、MBDの普及を推進する。
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