デンソーの視認性向上技術で高齢者も使いやすいUI、京都で配車サービス実験中:モビリティサービス
デンソーは2021年9月1日、地域情報配信システム「ライフビジョン」を活用したデマンド交通予約機能の実証実験を京都府伊根町で実施すると発表した。同町の住民がタブレット端末から配車サービスを手軽に利用できるようにする。実証実験の期間は同年10月31日までを予定している。
デンソーは2021年9月1日、地域情報配信システム「ライフビジョン」を活用したデマンド交通予約機能の実証実験を京都府伊根町で実施すると発表した。同町の住民がタブレット端末から配車サービスを手軽に利用できるようにする。実証実験の期間は同年10月31日までを予定している。
高齢化と過疎化が進む地域での移動手段に
デンソーが開発したライフビジョンは自治体から地域住民へさまざまな情報を提供する、地域情報配信システムである。地域住民に関わる日常のお知らせや災害情報、地域広報誌などをタブレット端末やスマートフォンに専用アプリケーションを通じて配信する。現在、全国48カ所の自治体で導入が進められているという。
今回の実証実験ではライフビジョンにデマンド交通予約機能を追加する形で地域住民に提供する。これによって、免許返納などで交通手段がない高齢者などの移動ニーズに対して、乗り合い配車サービスによる車両のマッチングを効率的に行う仕組みづくりを目指す。
デンソー 自動車&ライフソリューション部 地域ITサービス事業室の杉山幸一氏は「近年、地方社会では地域の過疎化や住民の高齢化に伴い、タクシーやバス業者などが撤退するケースが増えている。特に病院や店舗が地元周辺に少ない場合、免許返納済みの高齢者はこれらの交通機関を使いたくても利用できない不便な状況だ。こうした課題をITサービスを利用することで解消したい。移動ニーズと車両のマッチングを効率的に行い、またサービス運営に必要な人員を可能な限り抑えることで、運営の継続性も確保する」と説明する。
実験の場となる京都府伊根町は京都府北端に位置する町で、人口は2002人、世帯数は905世帯、高齢化率(65歳以上の人口)は人口比45%である。デンソーは2020年から同町の全世帯にライフビジョン(伊根町版は「いねばん」)が使えるタブレット端末を配布しており、住民には日々、自治体から災害情報や地域の商店からの広告などさまざまな情報が配信されている。
デマンド交通予約機能を使うことで同町住民は、タブレット端末から配車サービスを申し込めるようになる。具体的なシステム構成としては、伊根町の町役場が管理する住民の世帯情報データベースとライフビジョンの利用者IDをひも付けし、さらに、順風路が展開するオンデマンド交通システム「コンビニクル」とライフビジョンをAPIで連携している。この一連のシステムによって、配車予約時にタブレット端末の利用者に関する情報が、実際の配車指示を行うコンビニクルの予約管理システムにあらかじめ伝わる。このため、利用者はサービス利用時に自身の氏名などを入力する手間なく、画面のガイダンスに従ってボタンを押すだけでスムーズに利用できる。
サービス自体は乗り合い配車サービスの扱いとなる。利用者は自宅前に迎えに来た車両に乗り、町内に100カ所程度あるポイントを降車地点として指定することができる。
杉山氏は、高齢者にとって利用しやすいITサービスを意識して開発したと語る。特に気を使ったのが、アプリケーションのUI(ユーザーインタフェース)面だという。「当社は自動車メーターなどの開発において、誰にでも見やすいUIを開発するために視認性に関する知見を蓄積してきた。ライフビジョンにおいても、老眼鏡を着用した高齢者にとって、見やすい色味や文字サイズなどを採用している。また、デマンド交通予約機能の開発においては、画面階層数をなるべく少なし、操作に対するレスポンス速度を高めることで画面操作時に高齢者が混乱しないよう配慮した。機能を制限して、誰にでも理解できる機能数に絞っている」(杉山氏)。
杉山氏は今後のサービス展開について、「デマンド交通予約機能は現時点では無償で提供するが、将来的には有料化を検討している。事業としての利益が見通せる形にするために、さまざまなサービスと連携し、より大きな事業として育てていきたい」と語った。
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