2D図面の“一義性”を考える【その2】図形の表し方:3D CADとJIS製図(4)(3/3 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第4回は、JIS製図における2D図面の“図形の表し方”のポイントを詳しく取り上げる。
4.図面の配置バランス
続いて、図面の配置バランスについてです。以下に示したモデル(図9)の場合、どのような三面図を作成すべきでしょうか。
これまで解説してきた通り、製図では初めに「主投影図=正面図」を何にするかを考えなければなりません。主投影図は、その機能を示す代表的な面になります。筆者は、図10に示した矢印の向きを正面図の向きと考えます。
では、図面に落とし込んだ場合の、悪い例と良い例を比べてみましょう。図11のように、赤色枠内の面を正面図としてしまうと、正面図として全体像が認識しにくいばかりか、平面図が縦長になってしまいます。これは悪い例です。
図12は良い例です。全体像を理解しやすい正面図(赤色枠内)が選ばれています。
また、三面図のバランスを考えた場合、図枠への収まりがよさそうです。果たしてどうなのか、A3の図枠に全体が収まるように配置してみましょう(図13)。
比較してみると分かりますが、同じ尺度(1/1)、同じ図枠サイズ(A3)で表したとき、図13左に示した図面(図12の良い例)の方が明らかにバランスがよく、全体像が理解しやすいことが分かります。一方、図13中央の図面(図11の悪い例)の場合、図枠内にうまく収めるために、図形の尺度を小さくする必要があります。この場合、図13右のように余白ばかりがある図面になってしまいます。やはり、実物と同じ大きさで描く「現尺」の方が“大きさ感”も理解しやすいため、図13左のような図面を描くべきだと考えます。
次回は「5.補助投影図」からお話を続けます。3D CADでは正しく3Dパーツを設計(モデリング)していれば、図14のような2D作図のための機能を簡単に使うことが可能です。お楽しみに!(次回に続く)
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