安全対策が必要な医薬品の報告事例を抽出するAIを開発:医療機器ニュース
エクサウィザーズと京都大学は、医薬品の安全性に関するテキスト報告データを評価するAIを開発した。過去にPMDAが評価した結果を基に、薬局で発生したヒヤリハット事例のうち安全対策が必要な事例を抽出する。
エクサウィザーズは2021年8月11日、医薬品の安全性に関するテキスト報告データを評価するAI(人工知能)を京都大学と共同で開発したと発表した。日本医療機能評価機構(評価機構)が公開している「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の事例(薬局ヒヤリハット事例)に対して、過去に医薬品医療機器総合機構(PMDA)が評価した結果を基に、対策が必要な事例を抽出する。
薬局ヒヤリハット事例は、2019年度で約14.5万件報告されている。PMDAはその中から「規格、剤形間違い」「薬剤取違え」「疑義照会」「その他」に関する事例を抽出して、医薬品の物的要因に対する安全管理対策の必要性の有無について評価し、結果を踏まえて医薬品の製造販売会社などによる必要な安全管理対策を実施している。
今回、AIにこれらPMDAの評価結果を学習させ、PMDAが設定した5段階の安全対策要否を評価するAIを開発した。検証では、評価AIが製造販売業者などによる対策が必要とされる評価1、2の事例をどれくらい見落とさないかを確認した。
その結果、PMDAが評価1、2と判断した事例をAIがどれだけ正しく予測できたかを見る指標であるRecallが、96%で抽出できた。また、薬効情報や規制区分などの情報を取り込むことで、事例に含まれる重篤な健康被害を伴う可能性がある薬剤情報を抽出、評価する手法も活用している。
同社は、対策が必要と考えられる事例の抽出プロセスを効率化することで、将来的には安全管理対策業務の効率化につながるとしている。今後数年での実用化を目指し、さらなる精度向上に取り組んでいる。
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