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EHRと地理空間情報から感染拡大を予測、新型コロナへのAIの活用可能性とは人工知能ニュース(1/2 ページ)

Appierは「医療、ヘルスケア分野でのAI利用の重要性」と題した講演を開催し、新型コロナウイルス(COVID-19)に対するAIの活用可能性について解説を行った。

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 AI(人工知能)を活用したマーケティングソリューション開発などを手掛けるAppier(エイピア)は2020年3月31日「医療、ヘルスケア分野でのAI利用の重要性」と題した講演を開催した。同講演では新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大を防止する上でAIがどのように貢献できるかを、AIの専門家が解説した。

AIが再入院の可能性を予測、創薬プロセスの短縮化にも貢献

 Appier チーフAIサイエンティスト ミン・スン氏は講演の冒頭で「新型コロナウイルス感染症が脅威を増す前から欧米を中心に普及していた、患者の診療履歴を記録するEHR(Electronic Health Record:電子健康記録)のように、データ活用の仕組みを整備する取り組みが医療分野では進められてきた。それに加えて最近では、データを基に『いかに重要な意思決定を行うか』が問われるようになっており、医療従事者の意思決定を支援する用途でAI活用が広がりつつある」と指摘した。

Appier チーフAIサイエンティスト ミン・スン氏、出典:Appier
Appier チーフAIサイエンティスト ミン・スン氏、出典:Appier

 スン氏は具体的な活用事例として、米国アラバマ州の病院で導入された、患者の再入院の可能性を推定する分析ツールを取り上げた。「EHRから患者の入院期間や容体の緊急性、緊急外来を訪れた頻度などのデータを取得し、そこから再入院の確率を推定する。医療、資金リソースの適切な分配によって入退院を繰り返す患者数が減少し、結果として1300万米ドル(約14億円)のコスト削減につながった」(スン氏)。

 またスン氏は、創薬を効率的に進めるためにAIを活用した事例もあると語る。「強迫性障害用の治療薬候補となる350種類の化合物について、治験結果をAIで予測し、その結果をもとに治療に役立つ化合物を同定したという米国の事例がある。通常は創薬開始から臨床試験に進むまでに4〜5年はかかるが、そのプロセスを12カ月に短縮できた」(同氏)。

再入院の確率を減らす目的(左)や創薬プロセスの短縮化する目的(右)でAI導入が進む[クリックして拡大]出典:Appier

感染者が増える地域を予測し、医療リソースの配分を最適化

 では現在世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルスに対して、AIはどのような点で役立つのか。スン氏は新型コロナウイルスへの医療的対応をいくつかのプロセスに分けて、それぞれについてAIの活用可能性を解説した。

 まず感染予防に貢献する活用方法としては、EHRと地理空間データから感染率の増加が見込まれる地域を高精度で特定できるAIの予測モデル開発などが考えられる。「アラバマ州の病院の事例と同じように、どの地域にどのくらいの医療資源を割り当てるべきか、誰を検疫して隔離すべきかといった問題に適切な判断を下せるようになる。また高精度な感染予測が可能になれば、都市全体をロックダウンするのではなく、範囲を限定して特定地域のみを封鎖するといった対応が可能になる。これにより経済損失をある程度抑えられる。現時点で中国や韓国、台湾では、陽性者が出た地域をマークした地理空間データが一般公開されており、国民がPCR検査の受診を自己決定する判断材料として利用されている」(スン氏)。

EHRと地理空間データから新型コロナウイルスの感染が増加する地域を予測できる[クリックして拡大]出典:Appier
EHRと地理空間データから新型コロナウイルスの感染が増加する地域を予測できる[クリックして拡大]出典:Appier

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