製造業がポストコロナで勝ち残るために最低限必要となる3つの視点:ものづくり白書2021を読み解く(2)(5/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げる。
デジタル化のポイントになる無線化技術とセキュリティ
製造現場での無線通信技術の活用についてもダイナミックケイパビリティ強化のカギと位置付けており、無線通信技術をベースとした柔軟な生産ラインは、有事の際にもサプライチェーンの維持に大きく貢献するとしている(図17)。
また、無線通信技術の進展は、将来的に「制御技術(OT : Operational Technology)」と、生産計画全体を統括する「情報技術(IT : Information Technology)」との融合による市場のゲームチェンジにつながり得るとしている。これは、ユーザー企業に加え、OT市場に優位性を有する日本の産業機械メーカーにとっても重要な分岐点であり、今後、IT市場も視野に入れた事業展開が重要となると述べている(図18、図19)。
DXの取り組みと表裏一体で必要となるサイバーセキュリティ対策についても、レジリエンス強化の観点に立ち、中小企業を含めたサプライチェーン全体を巻き込みながら、官民一体で取り組んでいくことが重要だとしている。このような課題への対応に向け、経済産業省では、2019年4月「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク」(CPSF)を発表している(図20)。
このように、2021版ものづくり白書では「製造業のニューノーマル」として、「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」の3つの観点を列挙している。中でも「デジタル」に関しては、2020年版ものづくり白書2020に引き続き、日本の製造業が将来的に生き残るために不可欠なツールと位置付けており、政府も人材育成の促進に向けた環境構築、DX推進支援、各種取り組みの効果を高めるための研究開発支援などにより、企業の挑戦を積極的に後押ししている。
これを踏まえて第3回では、デジタル化の推進に向けたものづくり人材の確保と育成や、デジタル社会を支える教育および研究開発紹介の取り組みについて紹介したい。
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筆者紹介
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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