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日本の充電インフラのカギを握るe-Mobility Power、2030年代に向けた展望は?和田憲一郎の電動化新時代!(43)(3/3 ページ)

日本政府は、成長戦略として2030年までに普通充電器12万基、急速充電器3万基を設置すると発表しているが、日本の充電インフラの拡充はどのように進めるのだろうか。その鍵を握る企業がe-Mobility Power(以下eMP)だ。eMP 代表取締役社長である四ツ柳尚子氏と企画部マネジャーの花村幸正氏、同アシスタントマネジャーの長田美咲氏に、現在の状況と将来の方針についてインタビューを行った。

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将来の急速充電器の在り方は

和田氏 急速充電器は世界規模で拡大される見通しだ。欧州や中国など海外勢が大量生産によって安価で競争力のある充電器を日本に導入してくる可能性もある。将来の急速充電器の在り方についてどう考えているか。

四ツ柳氏 急速充電器はCHAdeMO(チャデモ)仕様に基づき各社が製造、販売している。統一されているのはあくまでプロトコルなどの仕様面であり、操作方法などは各社に委ねられているのが現状だ。このため、製品によっては操作時にユーザーが戸惑うケースがある。

 まだアイデアの段階であるが、操作手順などある程度基本的な仕様を各社と相談しながらそろえていくことで、ユーザーフレンドリーな急速充電器が増えると望ましいと考えている。急速充電器が増え、EVの普及が進展すれば、充電器を使う人が大幅に増える。今のうちから、ユーザーインタフェースを充実させていかなければならないと思っている。

 これまでは四角い武骨な急速充電器が多かったが、急速充電器メーカーと共同開発したスマートな6口タイプの充電器の設置も進めている。このように、ユーザビリティとデザインを大切にした商品を今後も設置していきたい。


図表5:共同開発の充電器(クリックして拡大) 出典:e-Mobility Power

和田氏 CHAdeMO協議会では、2022〜2023年に超急速充電器仕様「チャオジ(ChaoJi)」に対応した充電器が実用化されると聞いた。チャオジに対してはどのように対応する予定か。

四ツ柳氏 CHAdeMO協議会の総会では、2022年ごろ、深センにチャオジの超急速充電器を設置するというプレゼンをお聞きした。おそらく大型のEVバスやEVトラックでの採用と考えられる。日本でも、超急速での充電が必要なクルマが出始める段階で、われわれも対応を考えたいと思っている。車両と平行して超急速充電器の開発も進んでいるため、チャオジ対応モデルの情報が出た段階でインフラ設置を考えていきたい。

和田氏 最後に将来の目標について教えて欲しい。

四ツ柳氏 われわれのミッションは「いつでも、どこでも、誰もがリーズナブルに充電できるサービスの提供」である。まずはこのミッションに沿った形でのEV充電インフラを着実に作り上げていきたい。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを廃止する波は、自動車のみならず、小型船や建設機械など多方面にも広がってきている。将来的にはe-Mobilityという広義な概念で、自動車以外のニーズにも広く対応していきたい。

取材を終えて

 充電インフラに関して海外では民間企業が乱立し、ユーザーからみれば戸惑うケースもある。しかし、日本ではeMPがNCSやJCNも傘下に収め、1つとなったことで分かりやすくなった。その分、eMPは責任も大きくなるが、日本の充電インフラを引っ張っていく役割を果たすことに大いに期待したい。

 取材中で感じたことを所見として3つ述べたい。1つ目は、クルマと充電インフラの見込みがミスマッチではないかという懸念だ。

 政府は、2030年までに普通充電器12万基、急速充電器3万基を設置すると公表している。しかし、2035年にガソリンエンジン車が廃止となることを想定すると、2035年時点でのEVとPHEVの台数は新車販売(約500万台)の半分、つまり250万台前後となるのではないか。2020年のEVとPHEVの販売台数が約3万台弱であり、これから比較すると80倍以上に伸びることになる。つまり、クルマは指数関数的に増加していくのであり、充電インフラの需要見込みを一次関数的にみると見誤る可能性があるのではないだろうか。

 2つ目は、象徴的な充電インフラ設置を望みたいという点だ。大規模なSAなどで新型の急速充電器20基などを一気にそろえ、将来の充電インフラの在り方を見せてはどうであろうか。まさに充電インフラのショーケースである。世の中、何かが変わったと思えるのは、これまでと違ってエポックメイキングな出来事が起こったときだ。有名なレコード店で、ある日突然レコード盤からCDに品ぞろえがガラッと変わったことで、ユーザーは時代の変化を意識した。そのような時代の変わり目を象徴するような見せ方が充電インフラにあってもよいのではないか。

 3つ目はユーザーインタフェースの標準化だ。インタビューでも言及があったが、急速充電器のユーザーインタフェースの標準化は急務である。将来、多くの人が活用することを考えると、急速充電器関係者も含めて早期にガイドラインを協議し、「eMPガイドライン」を満たさない急速充電器は採用しないなど、方針を明らかにしていくことが大切ではないだろうか。

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筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。



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